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著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「日銀の次の一手は国債買入れの減額か ~「主な意見」は早ければ6月実施を示唆」
4月金融政策決定会合の「主な意見」の読み方
日本銀行は5月9日、4月MPM(金融政策決定会合)の「主な意見」(「金融政策決定会合における主な意見」)を公表しました。日銀ウオッチャーが最も重視するこの資料、丁寧に読むと今後の政策運営に関するヒントが浮かび上がってきます。ポイントは以下の3点です。
(1)物価の上振れリスクに関する意見が数多く掲載されている点。このことから、執行部から円安が物価に与える影響についてかなり詳しい分析・報告がなされ、MPMで議論されたことが分かります。
(2)その割に利上げ前倒しを匂わす意見が見られない点。「金融政策運営に関する意見」を見ると全体的にタカ派色が強まった印象は受けますが、内容からは利上げが近いという切迫感は伝わってきません。
(3)国債買入れの減額について具体的な意見が三つも掲載された点。これらの中身を精査すると、次の一手が利上げではなく、国債買入れの減額である可能性が高いことが伝わってきます。
4月MPMでは円安が物価に及ぼす影響がかなり議論されたもよう
それでは上のポイントを順に見ていきましょう。まず、「I.金融経済情勢に関する意見」で特に目立ったのが、物価上振れリスクに関する意見が多かった点です(図表1)。
図表1 4月MPM「主な意見」の金融経済情勢に関する意見
「主な意見」は各政策委員が議長(総裁)に意見を提出し、議長が編集することになっているため、例えば物価に関する意見が8個掲載されたということは、議長を除く8人の政策委員が一つずつ意見を提出した可能性が高いことを示しています。
しかも、通常は政策委員の見解を代表する意見が最初に掲載されますので、物価に関する意見の最初の二つは、執行部のトップである副総裁の意見である可能性が極めて高いと思われます。ただ、今回目を引いたのは3番目以降の意見です。
5個続けて物価の上振れリスクに触れており、6人いる審議委員のうち5人が物価の上振れリスクを意識していることになります。このことから、円安の物価に対する影響についての詳しい分析と報告が事前にあり、MPMの場でかなり突っ込んだ議論がなされたことを示唆しています。