日本企業に必要なのは競争力の高い製品の投入と海外での価格支配力

 今年の3月6日に出したレポートで、日本の輸出物価と米国の輸入物価の前年比が驚くほどリンクしていることを紹介しました。図表4はそれをアップデートしたものですが、このグラフは米国の輸入物価が米景気の強さを表し、日本の輸出価格がそれに左右されていることを示唆しています。

<図表4 日本の輸出物価と米国の輸入物価>

(注)日本の輸出物価は契約通貨ベース。シャドーは日本の景気後退期。
(出所)日本銀行、内閣府、BLS(米労働省労働統計局)、楽天証券経済研究所作成

 しかし、だからといって米国の輸入物価が上昇するほど経済が良好でなければ、日本の企業は輸出価格を引き上げられないのでしょうか。図表5を見てください。これは日本の乗用車の「北米向け」と「除く北米向け」の輸出価格です(契約通貨ベース)。

<図表5 日本の「北米向け乗用車」と「除く北米向け乗用車」の輸出価格>

(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 これを見れば、日本の自動車メーカーがここ数年、北米でかなり積極的に値上げしていることが分かります。製品に競争力さえあれば、こうした価格設定行動が可能であるということを示しているように思います。

 さらに、BLSが作成している国・地域別輸入物価を見てみると、2024年4月は日本からの輸入物価は前年比0.3%と辛うじてプラスを維持している程度ですが、フランスからの輸入物価は前年比4.6%、それを含むEU(欧州連合)からの輸入物価は2.1%と高く、マイナス圏に沈んでいる中国や台湾との違いが鮮明です。

<図表6 米国の国・地域別輸入物価>

(注)シャドーは米国の景気後退期。
(出所)米商務省、BLS、NBER(全米経済研究所)、楽天証券経済研究所作成

 輸出物価が輸出先の国・地域の景気に左右されるのは事実ですが、輸出する製品に競争力や価格支配力があれば、景気が悪化したときの影響を小さくすることが可能です。

 それが、ひいては海外での稼ぐ力の源泉となって、日本の実質GNI(国民総所得)や実質GDI(国内総所得)の押し上げに寄与することにもなります。図表5で見た北米向け自動車価格の上昇は、その兆候を示しているのかもしれません。