日銀の次の一手は利上げではなく、国債買入れの減額~6月の可能性も

 以上のように、輸入物価と為替の関係をきちんと見れば、極端な円安でも起きない限り、日本銀行が利上げを前倒す可能性は低いことが分かります。円安をはやして利上げをあおる報道も一部に見受けられますが、冷静に受け止める必要があります。

 ただし、国債買入れの減額については別かもしれません。実は、今回の「主な意見」の最大のメッセージは、日銀の次の一手が利上げではなく、国債買入れの減額である可能性が高いということを示唆している点です。図表2をもう一度見てください。

 今回掲載された国債買入れに関する三つの意見をよく読むと、内容がかなり具体的で、減額の方向性を示すべきという趣旨が共通していることが分かります。しかも、減額に反対する意見は出ていません。おそらく三つの中には副総裁の意見も含まれているとみられます。

 差し当たり円安が物価に大きな影響を及ぼすことがないとすれば、利上げ前倒しは困難ですが、国債買入れの減額は着手可能です。今の日本銀行の金融政策手段は、あくまでコールレート(オーバーナイト物)の金利操作であって国債買入れではありません。4月MPMの声明文はそれを明確に示しています。

 とはいえ、このタイミングで国債買入れの減額を実施すれば、市場は円安防止のために行ったと受け取るでしょう。日銀としては、そう受け取られないようコミュニケーションに工夫が必要となりますが、植田総裁の講演がヒントを与えています。

 植田総裁は5月8日に行った読売国際経済懇話会の講演(「賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営」)で、以下のように述べています。

 長期金利は、金融市場において形成されることが基本となるため、今後は、長期金利が、海外金利の動向や経済・物価見通しの変化などを反映して変動することは自然であると言えます。また、現在は、3月に見直した国債買入れの枠組みのもとでの金融市場の状況を確認しているところですが、今後、大規模な金融緩和からの出口を進めていくなかで、国債の買入れ額を減額していくことが適当であると考えています
(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 つまり、長期金利は金融市場で形成されるのが基本であるということを強調した上で、不連続な動きにならないよう配慮しつつも、国債買入れを段階的に減額していくことが自然であると説明し、早ければ6月13~14日に開催されるMPMでそれを決定する可能性が高いとみています。