(7)運用は、1:長期、2:分散、3:低コストで

 資産形成のための運用に、特別なマジックはない。運用金額が大きくても小さくても、運用商品の選択も含めて、運用方法は同じでいい。

 要点を3つにまとめると

1:長期
2:分散
3:低コスト

だ。

 運用方法に関しては、つみたてNISAがいい教材になる。

 資産の換金引き出しは自由だが、換金してしまうと、せっかく20年間の運用に使える節税運用枠を消費してしまうので、20年間バイ・アンド・ホールド(いったん買ったものを売らずにじっと持つこと)の長期運用になりやすい。

 また、内外の株式のインデックス・ファンドが選択可能なので、分散投資を実行しやすい。

 なお、現時点では債券の利回りが低いので、バランスファンドは不適当だ。

 また、つみたてNISAでは、ノーロード(販売手数料がゼロ)で信託報酬が一定水準以下の商品しか認められていない。

 近年、インデックス・ファンドの信託報酬引き下げ競争が進んだこともあって、低コストな運用が可能だ。

 金融庁は「長期投資に適当な商品を選んだ」と言っているが、長期で不適当な商品は短期の投資でも不適当なので、つみたてNISAの商品選定は大いに参考になる。

 販売手数料が掛かる商品や、信託報酬が高いアクティブ・ファンド、分配金を頻繁に支払うファンドなどは、いかなる運用にも適さないのが真実だ。

 読者は、「2,000万円騒動」のばかばかしさを気にせずに、計画的な人生設計と着実な資産形成を行うといい。

【コメント】

 2019年に世間を騒がせた「老後2,000万円問題」について、その渦中にあって書いた記事だ。事後的に見て、この問題は、投資に関する莫大な効果を持つ「炎上マーケティング」として機能した。国民の老後のお金に対する関心は大幅に高まった。「だから、良かったではないか」と納得できる性質の問題ではないが、本記事は、当時何が問題で、当時として何を考えるべきだったのかを知る手掛かりになるだろう。記事の中で、NISAに対する拡充の要望が書かれているが、その後、新NISAでこの要望を大きく上回る規模の制度が出来上がったのは結構なことだった。(2023年9月26日 山崎元)