(3)2,000万円必要かどうかは個人差がある

 例えば、今後の現役時代を通じた平均的な手取り年収が360万円(1カ月あたり30万円)で、現在年収1年分の、360万円を持っている35歳のサラリーマンを想定してみよう。

 将来の年金額を、今後の平均手取り収入の4割の144万円と想定し(やや楽観的な想定かもしれない)、65歳まで現役で30年間働き、95歳までの30年間の老後期間を現役時代の支出の70%(総務省の家計調査を見るとおおよそこの水準だ)で暮らすとするなら、筆者が作った人生設計の基本公式で計算すると、この人は手取り収入の15.69%、1カ月あたりで約4万7,000円の貯蓄が必要となる。

 とすると、現役時代を毎月約25万3,000円、老後には1カ月約17万7,000円で暮らすことができる(注:計算はインフレ率=賃金上昇率=資産運用利回りの前提だ。運用でインフレ以上に稼ぐことは計算に入っていない)。

 この人は、リタイア時点までに、元本ベースで1,694万円貯める計算になるが、これと元々持っていた360万円を合わせると、リタイア時点に持っていて老後の生活のために取り崩すことのできる金額は2,054万円となる。

 ただし、この金額には、介護施設に入所する一時金、遺産、葬式代などは含まれない。

 実際にはもう少し持っている方が安心だろう。

 サラリーマンは退職金があるかもしれないし、親等から受け継ぐ遺産があるかもしれないが、一方で、子供の教育費といった別途の支出要因があるかもしれない。

 もちろん、この人よりも低所得・低支出な人は、リタイア時に持っていたい金額がもう少し少額だろうし、逆に高所得・高支出な人は「2,000万円ではとても足りない」と思うケースが多いだろう。

 いずれにしても、報告書が示したような「平均」の数字ではなく、「自分の数字」で老後について計算してみることが重要だ。