(6)制度を有効に利用して備える

 報告書が「炎上」したことで、長期的な資産形成の有効性や将来に向けた個人の自助努力について話題にする事自体がはばかられるような、妙な雰囲気が拡がらないことを期待したい。金融庁や厚生労働省の役人達には、勇気を持って必要な政策に取り組んで欲しい。制度としての一般NISA、つみたてNISA(金融庁所管)もiDeCo(厚労省所管)も、まだまだ普及への努力が必要だ。

 これらの制度は、個人が自助努力で老後に向けて資産を形成することを支援する受け皿になっている。

 先に、月収手取り30万円のサラリーマンが毎月4万7,000円貯めると、おおよそ現在の支出と将来の生活費とのバランスが取れる、と計算してみたが、この人の場合、掛け金の所得控除のメリットが大きなiDeCoを上限の毎月2万3,000円まで利用し、残りの2万4,000円はつみたてNISAの口座に積み立てるといい。

 将来に向けて備えたい金額がもう少し大きな人もいるだろうから、つみたてNISAはせめて一月5万円、年額60万円まで利用枠を拡げてほしい、といった要望はあるが、こうした制度を有効に利用しながら長期的に資産形成を行いたい。

 なお、35歳で健康な正社員サラリーマンは自分自身に大きな「人的資本」があるので、iDeCo、つみたてNISAなどの節税運用が可能な口座では、リスク資産に投資する運用商品で運用することが適切な場合が多いだろう。

 内外の株式に投資するインデックス・ファンドで信託報酬率が低い物を選ぶことをお勧めする。