米国市場のセクター別騰落動向をチェック

 S&P500種指数の年初来騰落率が+17.2%に減速した中、「11大業種別株価指数」の年初来騰落率をみると高低が分かれています(図表3)。

 年初来騰落率で最も好調な上位3業種は「コミュニケーションサービス」(アルファベット、メタ・プラットフォームズを含む)、「IT(情報技術)」(アップル、マイクロソフト、エヌビディアを含む)、「一般消費財・サービス」(アマゾン・ドット・コム、テスラを含む)となっており、この3業種のみが年初来騰落率でS&P500を上回っています。

 コミュニケーションサービスの業績は2023年も2024年も二桁の前年比増益率が見込まれています。IT(情報技術)の業績は、2023年の減益を経て、2024年には19%を超える増益率が見込まれています。

 一般消費財・サービスの予想増減益率をみると、2023年も2024年も二桁増益が続く見通しとなっています。なお、資本財・サービスも2023年と2024年に二桁増益が見込まれています。

 一方、2022年に大幅増益を計上した「エネルギー」は、2023年と2024年は連続減益に陥るとみられています。また、銀行株を含む「金融」は2023年の減益から2024年は増益転換が見込まれています。2023年に最も厳しい減益率が見込まれているのは「不動産」です。

 商業用不動産の市況低迷に加え、銀行の融資姿勢が厳しくなる(貸し渋りが強くなる)ことが懸念されて株価は低調を余儀なくされています。図表3の最下段に示したS&P500ベースの業績を見ると、2023年の減益(▲2.9%)を経て、2024年は二桁増益(+11.3%)への回復が見込まれています。

 市場が2024年の増益転換を本格的に意識し始めるにつれて、米国株は秋から2023年末に向けて再び復調傾向をたどる可能性が高いと考えています。

<図表3>業種別の年初来騰落率に高低がみられる

*予想PERと予想増減益率はBloomberg集計の市場予想平均EPSに基づく
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年8月8月)

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