前回の金利サイクルと株式動向を振り返る

 実は、前回の金利サイクルと株価の関係を振り返ると、政策金利と債券市場金利の相対的な位置が株価の方向性に影響した市場実績がみてとれます。図表3は、2017年から2019年までの米国株(S&P500指数)と各種金利の推移を示したものです。

 FRBは2015年12月から2018年12月まで合計9回もの利上げを実施。その累積効果が期待インフレ率や先行き景況感を低下させ、債券市場金利は2018年末に低下に転じました。そして、政策金利と債券市場金利が並んだ状況(2018年末)で、米国株が底入れしたことがわかります。

 その後、債券市場金利は低下基調をたどり、株式は上昇。追いかけるようにFRBは2019年後半に利下げに転じました。

 2019年に米国株が28%以上上昇したことは記憶に新しいところです。2018末のFRBによる「利上げ打ち止め」が株式の反転回復につながった事実に注目です。

<図表3>前回の金利サイクルと株式動向を振り返る

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2017年初~2019年末)

 当時、政策金利が高止まりから低下に転じた中での株高局面におけるセクター(業種)物色を振り返りたいと思います(図表4)。

 2019年における債券市場金利の低下傾向を受け、最も株価が上昇したのは「ハイテク関連」でした。IT(情報技術)に次いでコミュニケーション・サービス(アルファベットや当時のフェイスブックを含む)などが市場平均をしのぐパフォーマンスをみせました。

 また、債券市場金利の低下や利下げを好感し、資本材・サービスや消費財・サービスも好調でした。当時(2019年)は「大統領選挙の前年」で株価が上昇しやすいことはアノマリー(市場の経験則)で予想されていましたが、想定を上回る上昇を記録しました。

 さて、2023年も「大統領選挙の前年」に相当します。その前年である2022年内に政策金利が債券市場金利に追い付くことも予想されます。

 本来は「逆イールド」として景気後退の兆候と警戒する向きもありますが、株式はすでに大きく下落して織り込んできました。

 むしろ来年は、「金利のピークアウト感」や「不況下の株高」を示現する可能性も否定できません。

 2022年に弱気相場入りを余儀なくされた米国株が、2023年にどのような軌道をたどるかについて、参考までに「2018年末までの利上げと2019年の米国株高」を市場実績としてご紹介しました。

 足元の株式相場が荒れていることは確かですが、先行きを冷静に見極め、難局をしのぎたいと考えます。

<図表4>2019年相場の業種別物色動向を振り返る

*S&P500指数とS&P10大業種別株価指数の2019年騰落率を示した。
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2018年末~2019年末)

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