米国市場ではグロース株ETFのリバウンドに好機

 上述したように、インフレ圧力が緩和もしくは収束に向かうなら、金利見通しも安定化する可能性があります。金利見通しが安定化すると、景気見通しに不透明感が強まる中でも、高い利益成長率が持続的に見込まれるテック分野を中心とするグロース株(成長株)を物色する機運が再び回復しそうです。

 逆に、景気敏感株、エネルギー株、金融株を中心としたバリュー株(割安株)はグロース株に劣後する可能性があります。

 図表4は、ETF(上場投資信託)運用会社大手のバンガード社が設定・運用している米国籍ETFのうち、グロース株ETF(バンガード・グロースETF:VUG)とバリュー株ETF(バンガード・バリューETF:VTV)の取引価格の推移を示したものです(2014年初=100)。

 VUGの方がVTVに比べると「ハイリスク・ハイリターン」であった(短期的なブレは大きいものの長期的なリターンが優勢だった)特徴がわかります。すでに世界景気は減速基調に入っています。米国でも雇用統計を除き総じて経済指標は鈍化傾向を示しています。

 インフレが峠越えから収束に向かう傾向が一段と明らかとなれば、FRBの金融政策もタカ派から「中立」に移行すると考えられます。こうした点を総じて考慮すると、年後半から来年には債券市場金利(利回り)が安定化することが想定されます。

 中間選挙(2022年11月8日)前に想定されるボラティリティ(9月から10月にかけての株価変動)をはさみ、米国株式は上下しながらも持ち直しのトレンドを続ける可能性があります。すでに来年(2023年)を視野に入れはじめた米国市場では、インフレと政策金利のピークアウト感を意識する展開が見込まれます。

 中長期的な視野に立てば、グロース株ETFのリバウンド傾向は続くと考え、需給要因で下げた場面はバーゲンハンティングの好機と思われます。

<図表4>グロース株ETFの戻り歩調に注目

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2014年初~2022年8月24日)

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