2022年も需給バランスは引き締まるか

「南アフリカ」は、世界のプラチナの鉱山生産のおよそ65%を生産しています(2020年時点)。2位のロシアがおよそ13%であるため、まさにプラチナは偏在している(偏って存在している)と、いえます。

図:プラチナの鉱山生産量 単位:トン

出所:ジョンソンマッセイのデータより筆者作成

 その南アフリカのプラチナの鉱山生産量は、コロナ元年となった2020年に大きく減少しました。南アフリカは、以前の「原油暴落、金(ゴールド)は上昇。変異株拡大を抑える手立てとは?」で述べたとおり、複数の変異株が発生した地域とされています。

 コロナ感染拡大により、地中数千メートルまで掘り下げた鉱山での作業がやりにくくなっている、市中での感染拡大が発生し、国の機能が一部、低下している、などが、その背景だと、考えられます。

 先述の「脱炭素」の環境下でも、自動車排ガス浄化装置向け需要は、急減せずに一定程度、存在すること、そして、鉱山生産量が不安定化していることにより、以下の通り、2020年は、プラチナの需給バランスは大きな供給不足になりました。

図:プラチナの需要と供給 単位:トン

出所:ジョンソンマッセイのデータより筆者作成

「コロナ・脱炭素」本格化、3年目の2022年も、この傾向が続くと筆者は考えています。

新しいプラチナの需要に注目

 2022年を「脱炭素」本格化、3年目と考えれば、「脱炭素」に関わる新しい技術の芽が、大きくなる可能性があります。以下は、脱炭素時代のプラチナの新しい役割を示したものです。水素生成装置、FCV(燃料電池車)の発電装置、合成液体燃料の精製装置などの電極部分にプラチナが化学反応を起こす触媒となり、電気とともに水を水素と酸素に分解したり、高温下で水素と酸素を結合させて発電したり、します。

図:脱炭素時代のプラチナの新しい役割

出所:筆者作成

 電気分解の際に用いる電気が、再生可能エネルギー由来の電気であれば、その過程で生成された水素は、「グリーン水素」と呼ばれます。水素は無色透明ですが、便宜上、生成過程を明らかにするため、「グリーン」、生成過程で発生した二酸化炭素を回収した「ブルー水素」、生成過程で発生した二酸化炭素を大気中に排出した「グレー水素」などに分けられます。

 プラチナは、最も環境にやさしい「グリーン水素」を生成する際の一助になると、注目されています。また、環境に配慮したFCVの発電装置や合成液体燃料の精製装置などでも、活躍するとされ、「脱炭素」本格化3年目に、大きな注目が集まるかもしれません。

 2020年時点では、プラチナの全需要の内訳は以下のとおりですが、2022年以降、そう遠くない将来、上記の「脱炭素」起因の新しい需要が、統計で確認される日が来ると、筆者は考えます。

図:プラチナの需要内訳(2020年)

出所:ジョンソンマッセイのデータより筆者作成