変異株の拡大、それによる「株安・原油安」は防ぐことができた?

 以下は、新型の変異株「オミクロン」の発生源とされるアフリカ南部諸国の、ワクチン接種率(2回接種済)を示しています。

図:アフリカ南部諸国のワクチン接種率(2021年11月下旬時点)

出所:Our World in Dataのデータより筆者作成

 南アフリカ、モザンビーク、マラウィ、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナ、レソト、エスワティニの8カ国は、複数の主要国が渡航制限を設けた国々です(11月29日時点)。上図のとおり、いずれも、ワクチン接種率が低い国々です。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)遺伝学研究所は、免疫力が低下したヒトの体内に慢性的にコロナウイルスが居座ることで、変異株が生まれる場合があり、「オミクロン」はこうした経緯をたどって生まれた、としています。

 広く周知されているとおり、いまもなお、アフリカ南部諸国などで、難病とされる免疫力を低下させる感染症が残っています。UCLが示した、免疫力低下とコロナの変異株誕生の関係をもとに考えれば、免疫力が低下する感染症の患者がコロナに感染した場合、コロナの変異株が生まれる可能性が高まります。

 別の専門家は、昨年同地域で発見された「ベータ」が生まれた経緯も、「オミクロン」と同様だったと、指摘しています。同地域のコロナの感染者を低減させることは、今後、同地域で新たな変異株を発生させないための、シンプルで有効な手段の一つと言えるでしょう。

 変異株の新たな発生を防ぐことができれば、コロナ起因の強い不安が世界にまん延する機会を低減できるのではないでしょうか。そうすれば、先週金曜日に発生したような、ショック級の下落が発生する機会を低減できるのではないでしょうか。

 まずは、同地域のワクチン接種率を上げることが、望まれます。渡航制限は短中期的には有効かもしれませんが、新たな変異株を発生させないことを目的とした、長期的な視点で言えば、ワクチンなどを用いて、同地域のコロナの感染者を増加させないことが重要でしょう。

 仮に、援助が不十分で同地域のコロナの感染者が増加し、それがきっかけで「オミクロン」が生まれたのであれば、「オミクロン」の発生や、それがきっかけで生じた株価や原油相場の急落は、人災と呼べるのかもしれません。

 今後、市場動向を分析するときは、「オミクロン」の拡大状況だけではなく、アフリカ南部諸国のコロナの感染状況や、ワクチンの接種率なども、追いかける必要がありそうです。