多くの時間帯で、上昇圧力は下落圧力に勝る

 前ページで、2022年の前提となる考え方を述べました。この考え方を参照し、2022年のプラチナ市場を巡る動きについて、考えます。以下は、筆者が考える2022年のプラチナ市場の環境です。

図:2022年のプラチナ市場の環境(筆者予想)

出所:筆者作成

 2022年は、ほぼ常に、下落圧力と上昇圧力の両方が存在すると考えます。とはいえ、拮抗(きっこう)したままではなく、どちらかといえば、上昇圧力が勝る時間帯の方が、長くなると考えます。2022年が「コロナ・脱炭素」が本格化して間もない3年目であることが、大きな要因です。

 下落圧力となる要素には、「脱炭素」ブームによって、ガソリン車やディーゼル車が否定され、排ガス浄化装置向けの貴金属の需要が減少する懸念が生じること(あくまで懸念)、コロナの変異株が新たに確認されるなど、突発事象により株価が下落することが挙げられます。

 一方、上昇圧力となる要素には、「コロナ」が、鉱山生産を減少させる懸念を生むきっかけとなること、「脱炭素」が、「水素社会」にプラチナが貢献する期待を高めることなどが、挙げられます。

 2022年は、上記のような上昇圧力と下落圧力が継続する中で、比較的、上昇要因が勝る時間帯の方が長くなる可能性があり、その結果として、価格上昇が見られると、考えます。

本格的な「ディーゼル否定」には至らない

 2015年のフォルクスワーゲンのスキャンダル発覚により、プラチナ価格が急落すると考えられたのは、プラチナの主な用途が、自動車の排ガス浄化装置向けであるためです。当時、同スキャンダル発覚が、プラチナの当該需要を急減させると、多くの人が考えました。

図:自動車1台あたりに使用される、排ガス浄化装置向け貴金属の量

出所:ジョンソンマッセイおよびOICAのデータより筆者作成

 ただ、上図のとおり、自動車1台あたりに使われる排ガス浄化装置向け需要は、2015年以降、増加しています。

 環境保護先進国の集団である欧州だけでなく、米国、日本、中国などの主要国は、断続的に、排ガス規制を強化しています。各国は、自らに課した厳しい規制に対応すべく、排ガス浄化装置の性能を向上させる必要に迫られていると、考えられます。

 その結果、1台あたりに使用される貴金属の量が、増加していると考えられます。自動車の生産台数が減少したからといって、必ずしも、プラチナの当該需要が減少することにはならないのです。「脱炭素」3年目の2022年も、排ガス規制の強化の流れが継続することから、当該需要は、増加する可能性があると、筆者は考えます。