テスラEVは過大評価、トヨタHVは過小評価と考える

 今のESG基準では、電気自動車(EV:Electric Vehicle)は「善」、ハイブリッド車(HV)は化石燃料を使うので「悪」とされます。「EVは排ガスを出さないので善」「HVは燃費が高い環境車だがガソリンを使うので悪」という決めつけです。EVが使う電気のほとんどが化石燃料から作られている現状を見ると、EVそのものは排ガスを出さなくても、発電で大量の排ガスが出ているので、単純に善とするのに違和感があります。EVを、EEV(Emission Elsewhere Vehicle:他所で排ガスを出す車)と呼ぶ悪口もあります。

 EVや燃料電池車(水素自動車)が世界中に普及するまでにまだ何十年もかかると思います。その間、ガソリン車の燃費を大幅に改善するハイブリッド車の活躍余地は大いにあると思います。それを評価しないで、単純にEV=善、HV=悪とする基準には違和感を覚えます。

 とは言え、世界の投資マネーは、既存の欧州基準に従って動き始めています。EVで世界首位の米テスラには、ESGを重視する世界中のマネーが投資するので大幅に値上がりしました。収益力と比較してかなり割高な水準に買われていると私は考えています。

 一方、トヨタ自動車(7203)は、ガソリン車で世界トップの競争力を持ち、ハイブリッド車の技術でも世界トップにもかかわらず、株式市場で低評価になっています。最近、燃料電池車の開発で先行していることに注目した買いは入るようになっていますが、ハイブリッド車で世界トップの技術を持つことを評価した買いは入りにくくなっています。

 今、世界では「ガソリンを使う車はすべて悪」ときめつける風潮があって、ハイブリッド車ですら、ガソリンを使う車として、排除する対象(販売にペナルティが課されるガソリン車)に加える傾向があります。

 たとえば、米国では、環境規制の厳しいカリフォルニア州などでZEV規制(排出ガスゼロ規制:排出ガスがゼロ、あるいは限りなくゼロに近い自動車の販売が一定比率以下だとペナルティ支払いが必要となる規制)が導入されています。ここでは、EV・燃料電池車・PHV(プラグインハイブリッド車)のみがゼロ排出車とされ、ハイブリッド車は、通常のガソリン車と同じ、販売にペナルティが課せられる車となっています。