食品小売価格を動かす要因は需要ではない
以下は、食品の小売価格が決まるまでの流れを示した資料です。川上には、農産物やエネルギーの生産者がいます。彼らが生産する生産物が食材となったり、それを輸送する際の燃料になったり、加工する際に用いられる電気を起こす源になったりします。
外国で流通する際に決定する国際価格、運賃や保険料を含み、為替の影響を受けた輸入価格、流通業者や加工業者の間で売買される際の卸売価格、そして消費者がスーパーマーケットやレストランなど直に食品を消費する際の小売価格が存在します。食品の小売価格は、末端の価格だと言えます。
図:食品の小売価格が決まるまでの流れ(原材料が外国で生産されていた場合)
末端の価格を動かすのは、その時の需要と供給の状態ですが、影響が大きいのは供給です。
世界屈指の輸入国であり消費国である日本で暮らしていると、小売価格を決めているのは需要だと思い込んでしまいがちですが、昨今、各種コーヒーショップで提供されているコーヒーやパンの小売価格や、スーパーマーケットで売られている食用油、各種お菓子の価格が上昇しているのは(価格を据え置き、量を減らす「ステルス値上げ」を含む)、需要が旺盛だからではありません。上の図に書いた輸入価格が上昇しているためです。
輸入価格は、先ほど述べたとおり国際価格に運賃や保険料を加味し、為替の影響を考慮した価格です。円安が進行したり、航路・空路などに支障が生じるなどして保険料が上がったりした場合も、輸入価格は上昇します。そして何より影響が大きいのが、国際価格の変動です。
国際市場の分析なくして、食品小売価格の動向やエンゲル係数の動向を考えることはできません(特に日本では)。以下のとおり、食品小売価格を含む社会一般の多数の事象が川下であること、金融政策は物価対策、景気対策などの人為的な調整が川中であること、そしてこれらを網羅するように影響力を行使するのがコモディティ(国際商品)であることを、心にとめておくべきです。