主要国でじわじわ上昇する「エンゲル係数」

 最近、複数の主要メディアが、「エンゲル係数」を取り上げています。足元の物価高を説明する一つのモノサシとして使われる同係数は、家計に占める食費÷国内家計最終消費支出で算出します。以下のとおり、日本を含めた西側の先進国で上昇傾向が鮮明になっています。

図:エンゲル係数(家計に占める食費 ÷ 国内家計最終消費支出)

出所:総務省およびOECDのデータを基に筆者作成

 総務省のウェブサイトには、「エンゲル係数は、消費支出に占める食料費の割合であり、一般にエンゲル係数が低いほど生活水準が高いとされています」と書かれています。逆に、同係数が高ければ、家計に占める食費の割合が高く、それ以外の支出が抑制的になり、生活の水準が低くなることを意味します。

 生活水準が高い人の中には、ESG(環境・社会・企業統治)の考え方を重視し、あえて多めに食費を払う人もいるかもしれません。また、高級志向故、食費が大きくなる場合もあるかもしれません。

 こうした生活水準や意識が高い人たちが同係数を上昇させているという発想もあろうかと思いますが、世界の名だたる複数の主要国で、共通してエンゲル係数の上昇が見られていることを考えれば、生活水準や意識が高い人の件は例外の域を超えず、世界を巻き込んだ大きな潮流をきっかけとした根本的な事象が、同係数の上昇を継続させていると考えるのが自然でしょう。

 グラフのとおり、同係数の上昇は2010年ごろから、目立ち始めています。本レポートの後半で、2010年を起点としたエンゲル係数の上昇の背景について筆者の考えを述べます。まずは、エンゲル係数の動向を一段、深堀します。