食品の小売価格高は世界各地で起きている

 以下は、主要国における国民一人当たりの家計に占める食費と国内家計最終消費支出を比較したグラフです。

 2010年の各数値が2022年に、どの方向に動いたかを確認できます。縦軸が国民一人当たりの家計に占める食費、横軸が国民一人当たりの国内家計最終消費支出です。右に動けば動くほど、最終支出(支出の総額)が増えたことを、上に動けば動くほど、家計に占める食費が増えたことを意味します。

 米国、オーストラリア、カナダ、英国、ドイツは、右上に動きました。食費の増加と同時に、支出の総額が増えたことを示すこの動きは、食料の小売価格上昇による負担を軽減すべく、金銭的面の付与を中心とした支援が行われたことを示唆しています。特に動きが大きかった米国では比較的、その規模が大きかったと考えられます。

 スウェーデンとフランスは、わずかに左上に動きました。食費の増加と同時に、支出の総額が減少したことを示すこの動きは、食料の小売価格を抑制する政策がとられたものの、わずかならその規模が足りていなかったことを示唆しています。

図:国民一人当たりの食費と国内家計最終消費支出(2010年と2022年) 単位:ドル

出所:OECD、世界銀行、Investing.comのデータを基に筆者作成

 国によって動く方向と動きの程度に差が生じたのは、支援の方法や規模が異なるためだと考えられますが、「食費の増加」は上記のどの国でも発生しています。この点から、2010年以降目立っているエンゲル係数の上昇は、世界全体を網羅した事象が関わっていると言えます。