ドラッケンミラーによるカメコへの投資とエヌビディアへの投資の類似点
10月5日、日本経済新聞は『ウラン「ルネサンス」再びAI需要増、最高値迫る』と題する記事を掲載した。
それによると、人工知能(AI)など電力を大量消費する技術の急速な普及に加え、気候変動に配慮した安定電源として再評価されてきたことを背景に、世界で原子力発電を再稼働する動きが進んできたと伝えている。これに伴い、原発燃料のウランの長期契約価格は第2の「原子力ルネサンス」を先取りするかのように動いているということだ。
ニューヨーク市場に上場するカメコ(CCJ)は、世界2位のウラン生産を誇るカナダのウラン鉱山会社で、世界のウラン生産の15%超を占めているとされている。ウランの探鉱、開発、採掘、製錬、転換、成形などを行っており、原子炉向けのウラン燃料を世界中で提供している。
カメコ(日足)
カメコの売上高と純損益の推移
業績にブレはあるものの、株価は年初来で約3割、この1年で4割以上上昇している。
前述のドラッケンミラーは、今年第1四半期までこのカメコを保有していた。その後、具体的にどの時点かは不明ではあるものの、4-6月期中に売却したことが、デュケーヌがSEC(米証券取引委員会)に提出したフォーム13Fから明らかになっている。
ドラッケンミラーのポートフォリオにカメコが登場したのは2023年6月末時点のフォーム13Fからだった。以来、約1年にわたりカメコの保有を続けた。
売却が少し早かったようにも思われるが、ドラッケンミラーはエヌビディア(NVDA)やAI銘柄への投資についても、一般的な話題となり、十分な利益が出た時点で売却している。世間にその価値が広く認知されたところで、先行して利益を確保するということは重要だ。
2024年6月末時点のデュケーヌ・ファミリーオフィスのポートフォリオ
IEA(国際エネルギー機関)が2024年1月に発表したレポート『Electricity 2024 Analysis and forecast to 2026』のデータによると、生成AIなどの新技術を背景に世界の多くのデータセンターで消費される電力量が増加しており、2022年には消費電力量が世界全体で約460TWh(テラワット時)だったのに対し、2026年にはその倍以上の約1,000TWhに達する可能性があるとしている。これは日本全体の総消費電力量に匹敵する規模だという。
米アルファベット(GOOGL)傘下のグーグルは10月14日、次世代原子力発電の米新興企業カイロス・パワーが開発、設置するSMR(小型モジュール原子炉)から電力を購入する計画を発表した。
具体的な設置場所や金額などの詳細は明らかになっていないが、2030年までに最初のSMRを稼働させ、2035年までに複数のSMRの建設を支援し、あわせて7基のSMRで500MW(メガワット)規模の電力供給を目指す計画だ。
また16日には、アマゾン・ドット・コム(AMZN)がワシントン州のエナジー・ノースウェスト、バージニア州のドミニオン・エナジー、およびXエナジーとSMRプロジェクトの推進に向けて契約を締結したことを発表した。
バージニア州には米国のデータセンターの約半分が集中しているとされており、今後も15年間で電力需要が85%増加すると予測されている。アマゾンは2040年までに350億ドルを投資してバージニア州にデータセンターを設立すると発表しており、これらデータセンターにおける電力需要に対して供給を確実なものとする狙いがある。
米IT大手ではマイクロソフト(MSFT)も原発からの電力供給契約を進めており、米ハイテク各社が莫大(ばくだい)な規模の資金をAI開発と同時に電力確保へ向けた動きに振り向けている。
生成AIのブームによってデータセンターの電力消費量が急増しており、4年で倍増するとの試算もある。AIの消費電力が取り沙汰される中、改めて電力がこれからのデジタル社会を支える重要なインフラの一つであることが浮き彫りになっている。