米国の増え続ける負債と崩壊しつつある軍事力
米国が覇権を維持して生き残る唯一の方法は、何兆ドルもの紙幣を印刷することだった。市場をポンジスキームに変え、持続不可能で急速に増大する国家債務を管理していた。だが、そんな時代は終わりに近づいている。ゴールドの史上最高値更新相場はそれを示唆している。
持続不可能なまでに増え続ける負債、そして崩壊しつつある軍事力は、帝国の終焉(しゅうえん)を招く完璧なレシピである。そして、まさに今、米国が置かれている状況だ。
繁栄する帝国には非常に強力で効率的な経済、堅実な通貨、そして管理された一定レベルの負債が必要となる。今日、米国にはこうした必須条件が備わっていない。しかし、このことは特にゴールドにとっての新たな黄金時代を意味する。
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今後、ゴールド価格がさらに高騰する条件がそろいつつある。ゼロヘッジの10月11日の記事「米国の経済・軍事帝国の終焉とゴールドの台頭」から、一部を抜粋して紹介したい。
米国の財政赤字の推移
レーガン大統領の時代の1981年、財政赤字は9,000億ドルに過ぎなかった。それが今日では約40兆ドルにまで膨れ上がった。選挙に勝つためには票を金で買うこと、つまり財政政策が非常に効果的であり、どの大統領もそれを行なってきた。
それでも2017年末の時点で、8年後に債務が40兆ドルになることを予測していた人は誰もいなかっただろう。1981年に比べて44倍だ。一方、税金による歳入は8倍にしか増えていない。
われわれは負債とインフレが超指数関数的に増加する時代の始まりに立っている。指数関数的に増え続ける現在の負債を推定すると、2036年には米国の連邦負債は100兆ドルに達するとみられる。100兆ドルの負債は、高いインフレとデフォルトのリスクを意味し、はるかに高い金利につながる。 3~4%の利回りでは誰もリスクの高い米国債を保有しようとはしないだろう。
1971年以降の金価格の推移
インフレと通貨の大増刷は一般的に通貨安を意味する。ゴールドは引き続き恩恵を受けるだろう。実際、ゴールドの実物には深刻な供給不足が生じている。世界の金融資産のうちゴールドに投資されているのはわずか0.5%で、額は3.6兆ドル、すなわち4万3,000トンに相当する。
もし金への投資が1980年の水準である金融資産の2.7%まで増加したとすると、23万トンの金が必要となる。これは、これまでの歴史上で生産された金の総量とほぼ同量である。
つまり、避けられないゴールド需要の増加は、大幅な価格の上昇によってのみ満たされるということだ。この場合の「大幅な」とは、ゴールド価格が何倍にも上昇することを意味する。債務の増加やインフレは通貨の下落とゴールド価格の上昇につながる。
以上が「米国の経済・軍事帝国の終焉とゴールドの台頭」からの抜粋だが、ゴールドへの投資の重要な目的は、その投資から高いリターンを得ることではない。金融システムに見られるリスクから資産を守り、保全することである。
歴史を通じて、ゴールドは通貨の価値下落に対する優れたヘッジ手段となってきた。2024年のゴールドに対するファンダメンタルズを見ると、ゴールドに「大きく賭ける」理由が2002年当時よりもはるかに高くなっていると言えるだろう。
ベストセラー作家のローレンス・マクドナルドがXに投稿した「最新のデータ」では、米国の債務を返済するための利息コストは、ここ数カ月で爆発的に上昇している。次の3年間で財務省は15.5兆ドルの債務を借り換えなければならない。
巨大な債務の壁と米国債の償還
【2024年から2026年にかけて、15.5兆ドル近くの米国債務が繰り越される。2024年の選挙の年に、ジャネット・イエレン財務長官は株価上昇と市場の可能な限りの平穏を望んでいた。
彼女は何をしたか? 米国財務省は近年、無謀にも途方もない量のTビルを売却した。
より長期の債券は、償還期限が1年未満のTビルよりも価格がはるかに大きく変動する。大量のTビルを発行することで、イエレン陣営は選挙の年に市場から多くの債券ボラティリティを吸い取ることに成功した。
ジョーとカマラを助けるためなら何でもする。次期財務長官は、この債務の一部を期限切れにし、より長期の債券を市場に売却しなければならない。
私たちは、これが来年前半にかなりのドラマを生み出すと考えている】
(ローレンス・マクドナルド)
負債と資産を両方膨らますMMTという両建て経済政策のまん延で巨大な資産バブルが起きているが、高い債務比率が経済の実質成長を阻害するため、そこから抜け出す方法はない。 これを解決する最終的な唯一の解決策は高インフレだ。
高インフレは名目的な負債は増えても、負債の実質的価値を劇的に縮小させることができる。残念ながら、株式ポートフォリオの価値も縮小するだろう。
この危機に対する保険は、ゴールド、石油株、金属、そしてAIやデータセンターで問題になっている電力争奪戦への対応としてのウラン関連銘柄への投資である。
カメコ(日足)
フリーポート・マクモラン(日足)
現在の「全部買い相場」が反転すれば、「全部売り」になる。全部売りの時のバーゲンハンティングのために、ウォーレン・バフェットはポートフォリオの現金比率を45%に引き上げているが、ポートフォリオで何かを保有してインフレヘッジを行うことは、常に大きなリスクが伴う。したがって、現在、インフレに多少負けても現金を保有しておくことは極めて重要なポイントである。