ビットコイン保有は企業の新たな評価軸となるか?

 著名投資家のポール・チューダー・ジョーンズがCNBCに出演し、米国の財政赤字と両大統領候補が約束した支出増加について警鐘を鳴らした。

「債券市場が政府にその対策を迫る可能性がある。全ての道はインフレに通じる。トランプ氏とハリス氏は、今後の仕事に関しては両者とも最も適していない。両陣営が掲げた財政刺激策に関する公約はどれも実現しないと思う。大統領選挙後、私は国債を一切保有せず、長期債を空売りするつもりだ。私はゴールドをロング、ビットコインをロング、コモディティをロングだ」と語った。

*参照:「相場で最も大切なことは何か?ポール・チューダー・ジョーンズの相場哲学

 米マイクロストラテジー(MSTR)はビジネス上の意思決定を行うために社内外のデータを分析するソフトウエアやモバイルソフトウエア、クラウドベースのサービスを提供する企業だ。1989年に現在、会長を務めるマイケル・セイラーらによって設立された。主な競合企業には、独のエスエイピー(SAP)IBM(IBM)オラクル(ORCL)などが挙げられる。

 マイクロストラテジーの株価は年初来で200%超、5年前比では1,400%超上昇しており、S&P500種指数の中でトップのパフォーマンスを示している。

 その高パフォーマンスの背景にあるのが暗号資産(仮想通貨)ビットコインだ。マイクロストラテジーは上場企業の中で、ビットコインを最も多く保有する企業で、継続的にビットコインを買い増ししている。暗号通貨を大量に保有していることから、ビットコインの代替と捉えられている。

マイクロストラテジー(日足)

 (赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

マイクロストラテジー(週足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ビットコイン/ドル(週足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 マイクロストラテジーは2020年8月から大規模なビットコイン購入を開始し、その後、社債などを発行して資金調達をしつつ、大規模なビットコイン買い増し戦略を続けてきた。

 仮想通貨市場の情報を扱うコインゲッコーによると、マイクロストラテジーが保有するビットコインは額にして約172億ドル、流通するビットコインの1.2%を保有している。これに対してマイクロストラテジーの時価総額は約437億ドル(10月18日終値時点)だ。

上場企業によるビットコイン保有ランキング

出所:コインゲッコー

 マイクロストラテジーは発行済株式数に対するビットコイン保有高を示す独自のパフォーマンス指標である「ビットコイン・イールド」を公表している。2024年第二決算の発表時に公開された「ビットコイン・イールド」は2024年度で12.2%になるとしている。2025年以降、4~8%を想定している。

マイクロストラテジーのビットコイン・イールド

出所:マイクロストラテジー決算発表資料

マイクロストラテジーが保有するビットコインと時価総額

出所:マイクロストラテジー決算発表資料

 インフレが高止まりする中、企業が代替資産としてビットコインを保有する動きが広がってきている。一方で投資家は、企業がビットコインを保有する戦略を株式市場における新たな評価軸として認識し始めている。

 9月18日、YouTube動画に登場したマイケル・セイラーは、「ビットコインが価値の保存手段として機能する可能性がある」と語った。株式市場に上場する企業の株式を保有するという伝統的な金融市場の枠組みにおいて、仮想通貨市場への間接的なエクスポージャーを得ることができるからである。