カマラ旋風とカマラノミクス

 米国は1970年代に価格統制を試みた。そして今、またカマラ・ハリスが「価格統制」を宣言した。

【金曜日にノースカロライナ州で開かれた集会で、民主党の大統領候補であるカマラ・ハリス副大統領は、共産主義的な経済計画である「価格(物価)統制」を発表した。彼女とバイデン大統領の下での無謀な政府支出が、特に食料品店での物価高騰の主な原因であるという現実があるにもかかわらず、彼女の主張は悪の資本主義と企業によるインフレのまん延である。

 滑稽なのは、ワシントン・ポストのコラムニスト、キャサリン・ランペルでさえ、食料品の「価格破壊」を止めるために価格統制を実施するというハリス副大統領の経済計画を批判したことだ。

「この政策がどれほど悪いものか、誇張するのは難しい」とランペルは書いている。彼女はこの論説のタイトルを、「相手があなたを『共産主義者』と呼ぶなら、価格統制を提案しない方がいいのでは?」とした】

8月18日ゼロヘッジ 「Kamala Harris' Proposed Price Controls May Lead To "Communism, Mass Starvation, & End Of America"」

*価格統制:価格統制商品価格、サービス料金、賃金、利子率などの決定を市場の自由な決定に任せずに、政府当局などが政策的に指定あるいは規制すること。それは価格水準に一定の枠をはめるだけで、その水準における需給量には直接干渉しないという点で、数量そのものに干渉する数量統制(割当制、配給制など)とは異なる。

 カマラ・ハリスがこれまで述べた経済政策は以下の四つである。

  1. 価格統制
  2. 28%の法人税
  3. キャピタルゲイン税44.6%
  4. 株の含み益に対する25%の課税

 カマラ・ハリスは、長期キャピタルゲイン税率を44.6%に引き上げるバイデンの2025年キャピタルゲイン税提案を支持した。これは1922年以来最高の長期キャピタルゲイン税率となる。この計画では、富裕層の未実現資本利得に25%の税金を課すことも提案されている。バフェットが株を売りたくなるのも当然かもしれない。

 このカマラ・ハリスの経済政策を受けて、債券王ジェフリー・ガンドラックは、「市場の冷酷な判決を尊重してください。今日の発表は、補助金の増額と紙幣増刷、そして食料(すぐに他の物も)の価格統制を同時に提案しており、ゴールドの急騰を即座に引き起こしました」とXに投稿した。

ゴールド(週足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 フリードリヒ・ハイエクは、「歴史とは大きくはインフレの歴史であり、通常インフレは政府の利得のために政府が仕組んだものといっても過言ではないだろう」と述べた。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締め策の実施を望まなければ、政府は難なく価格統制を導入して、少なくとも目先のインフレを抑えられる。価格統制のうまみは、政府による完全な経済支配である。

「価格統制の結果、民間企業を公的機関に引き渡すことになるかもしれない。つまり、完全なる計画経済に向けての大きな一歩となるのだ」

(シュンペーター)

 米国経済はすでに景気後退に入っているのだろう。だが、それで米国株がただちに下がるということではない。

 ピーター・オンジェは、「先週、年間インフレ率が2021年以来初めて3%を下回ったため、主流のジャーナリストたちは大喜びした。ただ一つ問題がある。それは、不況が近づいているためインフレが下がっているということだ。全てが下落しているが、大統領選挙が終わるまでは不況にならない」と述べている。

 主流メディアとFRBは、11月過ぎまで「景気後退」を隠しながら、「インフレの低下」を囃し立てるだろう。

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