3 三井化学(4183・東証プライム)

 総合化学大手の一角で、石油化学からヘルスケアや機能材料へと事業領域を拡充させています。

 現在はライフ&ヘルスケア(メガネレンズ材料や不織布)、モビリティ(エラストマー重合製品や複合材料製品などの自動車部品)、ICT(フォトマスク用防じんカバーなどの半導体材料や電池材料)、ベーシック&グリーン・マテリアルズ(エチレンなどの石化製品や基礎化学品)の四つの事業ポートフォリオで展開しています。

 メガネ材料、フォトマスク防じんカバー、食品包材用ウレタンバリアコートなどは世界トップシェアを誇る製品となっています。

 2025年3月期第1四半期営業利益は272億円で前年同期比95.9%増となっています。主要セグメントはそろって増益となりましたが、中でもベーシック&グリーン・マテリアルズが、値上げ効果や原材料価格上昇に伴う在庫評価益などで大幅に収益が改善しています。

 上半期営業利益は為替前提を円安方向に見直したものの、460億円で同47.2%増を据え置きし、モビリティやベーシック&グリーン・マテリアルズが固定費増などで第1四半期比悪化を見込んでいます。なお、現在、大阪エチレンプラントが不具合のために生産休止となっており、その悪影響は業績予想に反映し切れていないようです。

 年間配当金は前期比10円増の150円を計画しています。配当金はDOE(自己資本配当率)3.0%以上のほか、安定的かつ継続的な配当を目指すとしています。ここ10年間で減配は行っていません。また、総還元性向30%以上を目指し、機動的かつ柔軟な自己株式取得を実施するとしています。

 短期的には、市場想定を上振れた第1四半期業績にもかかわらず株価は下落していることで、反動高の余地が大きいといえます。中期的には、蘭ASMLなどと連携している次世代のCNT(カーボンナノチューブ)ペリクル早期事業化などが期待材料と捉えられます。

4 大和証券グループ本社(8601・東証プライム)

 国内第2位の証券会社である大和証券が中核となっています。証券・不動産アセットマネジメント企業、シンクタンク企業、大和ネクスト銀行なども傘下に抱えています。資産管理型ビジネス強化、残高ベースの収益拡大などに注力しています。アナリストのリサーチ力、コンサルティング力などに強みがあるとされ、国内ラップ口座契約残高も国内トップレベルととなっているようです。

 全国の金融機関との提携を推進していますが、2024年5月にはあおぞら銀行と資本業務提携を締結し、8月現在、23.95%の議決権比率を持つ筆頭株主となっています。

 2025年3月期第1四半期純利益は239億円で前年同期比1.2%増となっています。大和証券が中心となるウェルスマネジメント部門が増収増益となってけん引役になりました。一方、アセットマネジメント部門やグローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門は減益となっています。営業外収支の悪化も増益率低下に影響した格好です。

 ちなみに、前四半期比では株式市況活況の反動によって39.4%の減益となりました。2025年3月期通期業績予想は非公表ですが、市場コンセンサスは1,270億円程度とみられ、その水準に対する進捗率は20%弱の水準となっています。

 2024~2026年度の中期経営計画期間を対象に、大手金融機関では初めてとなる下限配当金を導入し、前期実績となる44円に設定しています。また、配当性向は半期ごとに50%以上としています。資産管理型ビジネスモデルへの移行や事業ポートフォリオの多様化でベース利益が積み上がっており、グループ業績の底堅さが進展したことを下限配当導入の背景としています。

 株式市場の先行き不透明感や企業収益のピークアウト懸念が強まる中では、減配リスクの乏しさは安心感につながる余地が大きいと考えられます。なお、内部留保を十分確保できた場合は、自己株式取得も含めてより積極的な利益還元を行う方針ともしています。

5 川崎汽船(9107・東証プライム)

 国内海運大手3社の一角です。2023年12月末時点の運航船腹数は439隻、ドライバルク船の173隻を筆頭に、自動車船、LNG(液化天然ガス)船などが隻数上位となっています。

 もともとはコンテナ船のウエートが相対的に高い状況でしたが、2018年に海運大手3社がおのおののコンテナ船事業と海外におけるコンテナターミナル事業をスピンオフし、それを統合した新会社「Ocean Network Express(ONE)」を設立しています。統合会社は持分法適用会社になっており、最近の収益急拡大のけん引役になっています。

 2025年3月期第1四半期経常利益は748億円で前年同期比58.6%増益となっています。ドライバルク船事業が、大型船、中小型船市況ともに輸送需要が堅調に推移して大幅増益となり、持分法投資損益として反映されるコンテナ船事業も、中東情勢に起因する喜望峰経由の迂回(うかい)ルート利用の⾧期化を背景とする船腹需給の引き締まりなどで短期運賃が上昇しているもようです。

 2025年3月期通期予想は2,200億円、前期比65.8%増で、第1四半期決算前に従来の1,350億円から上方修正しています。ドライバルク事業における底堅い市況推移、自動車船事業における自動車の生産・出荷台数堅調推移などが上振れの背景のようです。

 年間配当金は85円を計画し、株式分割を考慮した前期実績の83.33円から増配を見込んでいます。こちらは初期計画から変更されていません。会社側では2024~2026年度の中期計画期間中に還元総額3,330億円以上を実施するとしており、年間配当金については3年間85円を実施するようです。

 変動の大きいコンテナ船市況に業績が振り回されやすい状況下、減配リスクが乏しいことは買い安心感につながっていきそうです。また、機動的な株主還元として、3年間で1,500億円以上を想定しており、現在909億円を実施済みのため、目先的に500億円以上の自己株式取得が実施される可能性も高いと言えます。