2024年7月中旬以降、米国や世界で株価が大きく値下がりし、8月に入ってからは、特に日本の株式市場では歴史的な暴落が起きています。この波乱相場が深刻なもので長引くのか、早々に沈静化して回復を見せるのかを見通すのは困難です。

 ただ、資産づくりを長期で行う中では、このようなマーケットの急落を幾度となく経験することになります。この十数年だけ見ても、リーマンショック(2008年)、3.11(2011年)、チャイナショック(2015年)、コロナショック(2020年)など数年に一度、暴落が起きています。同時に、その度に要した期間は違えど、マーケットは回復してきたのも事実です。

 このことを経験し、長く投資を続けている方であれば、今回も価格が高い時は少なく買い、安い時は多く買えるドルコスト平均法を思い出し、焦らずコツコツと積み立てを続けようと思えるかもしれません。

 一方、今年からスタートした新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で投資を始めた方は、急激な相場変動と大きな資産額の減少を目の当たりにして不安を覚える方も少なくないでしょう。

 では、このようなとき、長期投資家はどのように考え、立ち振る舞えばよいかを、金融のプロフェッショナルや先輩投資家に聞いてみました。

なかのアセットマネジメント
代表取締役社長 中野晴啓氏

「マーケットはいつも日和見です。そして楽観と悲観を繰り返し、能天気だったムードが突如警戒と恐怖のおののきに変わってしまう。そうした無節操とも言える市場参加者の感情変化を追いかけて、相場で勝負する短期トレードとはまったく埒外にあるのが長期投資です。そして、とりあえず手っ取り早くもうけたいとのギラギラガツガツ衆が右往左往している様子とマーケットの値動きを冷静に観察できるのが長期投資家の強みでありましょう。

 それでも心が揺れる時にはいつも、自分が何のために始めた長期投資だったかを思い出してください。ずっと先の将来に向けて、自ら納得できる豊かな人生のための資産形成ならば、今見ているマーケットの上下は何ら関係ないことだと気付くはずです。

 そして長期積立投資家なればこそ、目前の狼狽(ろうばい)を横目にニコニコと買う側に回れるわけで、これが将来の果実をより大きく実らせてくれる源となりましょう。目線を未来に向けて、ゆったりのんびり長期投資を続けてまいりましょう!」

コモンズ投信
代表取締役社長 兼 最高運用責任者 伊井哲朗氏

「こうした局面で、投資の賢人バフェット氏は以下のアドバイスをしています。

【市場にとどまること、そして安く買うことだ】

『このような恐ろしい時期には、二つのことを絶対に忘れてはならない。一つは、広まった不安は投資家にとっての相棒だ。なぜなら、安く買えるから。二つ目は、個人的な恐怖が自身の敵だ。それは根拠のないものだろう。財務のしっかりとした優良企業を長期的に待っていれば、ほぼ間違いなくうまくいくはずだ』

 このメッセージは、周囲に広まったパニックに恐れて株を売り始めてはいけない。そして、富を生み出す投資の秘訣(ひけつ)は、長期的なものであることを意味しています。慌てているのは短期的な投資家や投機家です。長期的な資産形成をされる皆さんには、バフェット氏のような視点を持つことをお勧めします」

農林中金バリューインベストメンツ
常務取締役・最高投資責任者
奥野一成氏

「個人投資家は円建てで米国株式、グローバル株式の資産を保有しているので、急速に進んだ円安修正によって保有資産の下落は大きいものになっています。ただ、大きく下落したと単純に落胆するのではなく、この下落を株式要因と為替要因に分けて考える必要があります。例えば米国株式インデックス(円建て)は7/11から8/5までの期間でおよそ▲14%下落しましたが、株式要因▲5%程度、為替要因▲9%程度と、下落の大きな部分がドル安円高で説明できます。

 日本株の下落がかなり大きいので、『世界は終わった』と落胆する人もいるかもしれませんが、米国株式は高値から8%程度の下落にとどまっており、調整とすら言えないレベルです。

 では、次に『ドル安円高』は悲しむべきことでしょうか? 1カ月前は160円出さなければ買えなかったものが、今日は145円で買えるわけなので、日本で暮らす我々にとって、円高は海外資産に対する『購買力の向上』を意味します(まだまだ円高というには不十分だと思いますが)。

 確かに、手元にある『既に購入した海外資産(含む投資信託)』はドル安によって、目減りしていますが、今後も将来的にコツコツ海外資産を積立てようとしている投資家にとっては、『強い円』を使って有利に買うことができます。つまり円高によって、いわゆる『入金力』が増した状態。『株価下落+円の価値上昇』は日本の長期投資家にとっては喜ぶべき環境なのです」

楽天証券
資産づくり研究所 副所長 兼 ファンドアナリスト 篠田尚子

「足元のような環境は、自分の保有資産のリスク耐性と、自分自身のリスク許容度を知る良い機会です。やはり、長期投資であっても、特定の資産に対する過度な依存=集中投資は避けるべき。上昇相場では目にとどまりにくい、『下げ局面に強い』商品や、まだ割安に放置されている投資先にも目を向けてみることをおすすめします」

個人投資家
虫とり小僧氏

「マーケットは季節のように、いや季節よりも気まぐれに上がったり下がったりするものだという前提で私はつみたて投資をしているので、今回のような相場も完全に想定内。むしろ仕込みどころですね。たまにはこういう状況になってくれないと、つみたてスタンスにしている意味が半減してしまいます。長期投資なら『のんびり』でいい。人生を豊かにするために資産形成を試みているのに、相場に心を惑わされてしまうのは本末転倒ですから。

 私はこのスタンスで20年くらい続けていて、トータルの年率平均リターンは7%くらいです」

個人投資家 YouTuber
たぱぞう氏

「調整局面で明らかになることがいくつかあります。例えば…

  • 良いアセットか悪いアセットか
  • 値動きの激しいアセットか、マイルドなアセットか
  • 合う見解、合わない見解

 などなど多様です。これを忘れずに記録か記憶しておき、次回以降も生かしていきたいところです。

 長期投資で調整はつきものです。しかし、良いアセットを選別していれば恐れることはありません。調整は良いアセットを安く買えるチャンスだからです。いくつか調整で明らかになることを通して、よりポートフォリオを洗練させていけばよいのです。

 共に頑張りましょうね」

個人投資家 YouTuber
バンクアカデミー 小林亮平氏

「激動の相場が続いて精神的にもきつい日々が続いていますが、長期投資家はこんな時こそ『気絶投資』を実践してみてください。つまり、投資しているのを忘れるほど、ほったらかしにして波乱相場を乗り切るイメージです。

 それだけ人間の心理、恐怖というのは長期運用の妨げになってしまうので、買付は自動の積立投資に任せてしまうのがいいですね。

 その上で、いったん相場と離れてみて、家族や趣味などに時間を使っていきましょう!」