日経平均、史上最大の下げ幅と上げ幅を記録

 8月に入っての東京株式市場は、5日に日経平均株価が史上最大の下げ幅を記録し、翌日6日には史上最大の上げ幅を記録する歴史に残る相場展開となっています。

 今回の暴落は、米景気減速懸念の高まりや、日米金融政策の違いに伴う日米金利差の縮小、投機筋による円安ポジションの巻き戻しに伴う円急伸などさまざまな要因が指摘されていますが、「植田和男日本銀行総裁のタカ派転換」が大きな要因だったと思います。

 とはいえ、複合的な要因が重なりあっての暴落相場ですので、2008年から2009年にかけてのサブプライムショック(リーマンショック)、2020年のコロナショックといった「○○ショック」という名称は今のところついていません。

 個人的には、1987年10月19日の米国で発生した「ブラックマンデー」も今回の暴落同様、「これ」という明確な要因がないまま暴落しましたので、「日本版ブラックマンデー」が一番しっくりくるかなと思っています。

※今回の暴落まで東京市場で下落幅トップだったのは、米国でブラックマンデーが発生した翌日の1987年10月20日(3,836円)。

 話を戻しますが、東京株式市場は7日、内田真一日本銀行副総裁が「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と、7月31日に植田日銀総裁が残した「タカ派色」を打ち消したことで市場はやや落ち着きを取り戻しました。

 ただ、8日に、日銀が公表した7月30~31日開催の金融政策決定会合の「主な意見」において、「2025年度後半の「物価安定の目標」実現を前提とすると、そこに向けて、政策金利を中立金利まで引き上げていくべきである。中立金利は最低でも1%程度とみているが、急ピッチの利上げを避けるためには、経済・物価の反応を確認しつつ、適時かつ段階的に利上げしていく必要がある」との記載があったことから、日銀の方向性は「ハト派」なのか「タカ派」なのか、市場の疑心暗鬼は残ったままです。

 主な意見は、7月30~31日の日銀会合の話なので、8月7日の内田日銀副総裁の発言が、今の日銀の考えと捉えられそうですが、植田日銀総裁の話を確認しない限り市場の不透明感は払しょくできない様子です。

 衆院財務金融委員会と参院財政金融委員会は23日、株価乱高下や金融政策を巡る閉会中審査を開催します。参考人として植田日銀総裁の出席を要請していることから、23日には植田日銀総裁から何かしらの発言が出ると思われます。

新NISA×長期投資家は「ドルコスト平均法」が基本

 現在、投資家心理の悪化状態を示す日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)は40ポイント台を推移しており、投資家の多くが、「今後、相場が大きく変動する」と見込んでいます。日経平均VIが落ち着きを示す20ポイント前後まで下がらない限り、短期的な値動きに着目した投資家中心の騒がしい相場展開は続くでしょう。

 こうした状況ですと、日経平均やTOPIX(東証株価指数)など株価指数が上下に振れやすくなり一日の値幅も大きくなりがちです。デイトレード中心の方は値幅が狙えますので面白い地合いかもしれません。私も好きな方です。

 一方、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で投資されている方は、短期的な指数の値動きに一喜一憂せず、5年後、10年後といった先を見据えた投資を実践していただければと思います。

 長期投資の基本に立ち返りますと、暴落局面こそ「ドルコスト平均法」に尽きると思います。8月5日の暴落時、日経平均採用銘柄の225銘柄が全て下落するオールグリーン状態(東京株式市場では下落は緑、上昇は赤)でした。好業績銘柄も高配当・優待銘柄も根こそぎ下落するのが暴落局面ですので、暴落局面は長期投資からすると好業績銘柄などが安く拾える可能性があります。

 東京株式市場はまだ騒がしくなる余韻が残っていますので、日経平均やTOPIXが「二番底」を探るような動きとなった際は、「安く拾えるかもしれない」と前向きに捉えてください。

 その際、人気の高配当銘柄だけではなく、中間配当を実施している2月決算企業と8月決算企業にも注目してください。今月は、28日(水)が権利取り最終日となりますので、相対的にしっかりとした株価推移も期待できるかもしれません。

 ということで、今回は、中間配当を実施している2月決算企業と8月決算企業のうち、今期業績予想が、前期比で増収増益となっている5銘柄をご紹介します。

8月配当、業績が底堅い日本株5選

銘柄名 証券コード 株価(円)
(8月14日終値)
ポイント
ウエストホールディングス 1407 2,279 第4四半期の巻き返しに期待
AFC-HD
アムスライフサイエンス
2927 854 紅麹問題の影響は限定的か
アイドマ・ホールディングス 7373 1,439 中小企業の人手不足は業績の追い風に
エコートレーディング 7427 904 円安一服で原材料コストの低下に期待
ヨンドシーホールディングス 8008 1,855 ブランド事業、アパレル事業は堅調推移

 

ウエストホールディングス(1407)

 太陽光発電関連事業を展開しています。4月、再生可能エネルギー事業にて一部物件の引き渡し時期を変更したことで、2023年9月-2024年2月期業績の下方修正を発表しましたが、上半期から下半期への期ズレですので2024年8月期業績見通しは据え置きました。また、今期予想の配当は前期と同じ55円の方針です。

 足元の進捗(しんちょく)状況は芳しくありませんので、2024年8月期業績見通しの下方修正懸念はありますが、第4四半期に収益が伸びる傾向があることから、2024年6-8月期の巻き返しに期待です。

AFC-HDアムスライフサイエンス(2927)

 健康食品の受託製造や漢方薬などを展開しています。訪日外国人数の増加を受けて、健康食品の販売が伸びたことなどから、2023年9月-2024年5月期業績は前年同期比で大幅な増収増益となっています。2024年8月期各利益予想に対する進捗率がいずれも80%台のため、上方修正する可能性もあります。

 なお、小林製薬の紅麹問題を受けて、国立医薬品食品衛生研究所が発表した「小林製薬社製の紅麹を含む食品の事案に係る取組について」で記載がある原因物質は、同社が製造した製品に含まれていないことを6月にリリースしています。

アイドマ・ホールディングス(7373)

 中小企業向けの営業支援などコンサルティングサービスを展開しています。テレワークと出社を併用する企業が多く引き合いは多いことから、2024年8月期業績見通しは前年同期比で増収増益を見込んでいます。中小企業の人手不足問題は深刻なことから、引き続き需要拡大が期待できると考えます。

 また、今期初めて配当を実施する方針と発表しました。好業績だけではなく、配当に着目した投資家も取り込める可能性が高まったことはポジティブと考えます。

エコートレーディング(7427)

 ペットフードやペット用品の販売を展開しています。原材料価格の高騰の影響があり各利益は伸び悩みを見せていますが、コスト削減効果が下期に顕在化する見通しで、2025年2月期業績見通しは前年同期比増収増益を見込んでいます。足元の円安進行一服はコスト減少につながるため、原材料コストの低下も期待できるでしょう。

 なお、今期配当は前期の特別配当分がなくなるため減配となりますが、中間配当14円、期末配当14円の年28円の方針です。

ヨンドシーホールディングス(8008)

 宝飾ブランド「4℃」を中心としたブランド事業とアパレル事業を展開しています。2024年3-5月期は、ブランド事業、アパレル事業ともに計画通りに推移したことで、4四半期連続増収となり、純利益も4四半期連続増益での着地となりました。

 2025年2月期業績見通しに対する進捗率は低いですが、年末年始に売上および利益も偏る傾向があるため特に心配は要りません。なお、今期配当は前期同様、中間配当41.5円、期末配当41.5円の年83円の方針です。