10年後に向けたインド株価指数のイメージとその条件

「NIFTY指数(ニフティ50指数)」はインド株式市場を代表する株価指数で、インド・ナショナル証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額、流動性、浮動株比率などの基準を用いて選定された50銘柄で構成される時価総額加重平均指数です。NIFTY指数の過去20年(2005年以降)における暦年平均騰落率は+16.8%でした。

 この20年の間には、2008年のリーマンショック(米国市場発の金融危機)の余波でNIFTY指数は51.8%下落。2011年のインフレ・金融引き締めでは24.6%下落した年もありました。新興国市場ならではのボラティリティ(変動)を経てきた事実には留意が必要です。ただ、長期視点に立つと2004年末に2,080ポイントだったNIFTY指数は20年かけて約11.8倍に成長してきました(図表1)。

 上述したIMFの長期予想によると、インドの名目GDPは2024年から2029年まで年平均で10.3%成長していくと予想されています。

 今後10年もインド株式の堅調トレンドを想定する条件として、(1)生産年齢人口(労働人口)と平均所得の増勢で内需成長が続く、(2)「メイク・イン・インディア」による対内直接投資の効果で外需(輸出)が経済成長に寄与していく、(3)3期目に入ったモディ政権の目標である「2036年五輪開催のインド誘致」(南アジア初の五輪開催→インフラや運輸網の整備が加速する)に成功するなら、今後10年(2025年から2034年末)のNIFTY指数の平均暦年騰落率を12%程度と期待したいと思います。

 こうした年平均成長率と「複利効果」を想定すると、適宜の相場調整を経ながらも「2034年末までにNIFTY指数が7万7,000に到達する道筋」が視野に入ってきます(図表3)。*図表3の破線で示した株価指数の軌道はイメージ図であり、変動の大小や投資成果を保証するものではありません。

<図表3>10年後にNIFTY指数が7.7万を目指すイメージと条件

*上記した破線はイメージ図であり将来の投資成果を保証するものではありません
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成

 一方、インド市場に投資するにあたってのリスク(リターンのブレ)要因も下記します。

  1. 為替市場でインド通貨ルピーが対円で下落する(円高が進行する)と、円建てベースのインド株式(為替ヘッジなし)のリターンが一時的にせよ下押しする可能性はあります。
  2. 与党がヒンズー至上主義であり、イスラム教徒などとの宗教対立が激化してテロが発生すると社会的・政治的な不確実性が高まりインド市場が不安定になる可能性があります。
  3. 憲法で禁じられている「カースト制」(古くからの身分制)は、教育機会や職業選択の壁として現存しているとされ、「貧富の格差是正」や「中間層拡大」が遅れる懸念があります。
  4. 隣国のパキスタンや中国との間の国境紛争が再発するリスクがあります。最近では2022年12月にインド軍と中国軍が山岳部の係争地帯で武力衝突した事件がありました。
  5. インドは主要資源の輸入大国として知られます。原油価格などエネルギー相場が上昇するとインフレや産業投入コストが上昇して経済的打撃を受けやすい特徴があります。

 言うまでもないことですが、この地球上でリスク要因がない国(市場)はないと考えています。上記したリスク要因を踏まえた上で、経済成長期待が高いインド株式への長期分散投資を「資産形成におけるコア・サテライト戦略」(国際分散投資)のサテライト(衛星)部分に加えることは検討に値すると思います。

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