月末月初の切り返し

 もう一つ、大きな材料が月末に到来した。6月28日の米大統領候補者討論会では、期待に反して暗号資産への言及はなかったが、話した内容よりもバイデン大統領の覇気のなさが目立ち、ニューヨークタイムズやワシントンポストといった民主党寄りとされるメディアがこぞって候補者の交代の必要性を報じた。

 CNNの調査では討論後、候補者の交代が必要とする視聴者が7割に上ったもようだ。しかし、実際には候補者を交代する手続きの煩雑さに加え、残された時間でトランプ氏を凌駕(りょうが)することは困難と考えたせいか、民主党幹部は交代説の火消しに回っているとされる。

 こうした中、減税策による財政悪化から米債券が売られ、景気回復を見越した米株買い、また2016年の就任時の記憶もあり米ドルが買われるなど、「もしトラ(もしもトランプ氏が大統領になったら)」ディールともいうべき動きがみられた。そうした中、米長期金利が上昇、ドル買いにもかかわらず、BTC価格は上昇している。

材料面から見た7月のBTC相場

 材料面から見ると、7月のBTC相場は、上値は重いが底堅い展開が続きそうだ。

 まずファンダメンタルズでは9日に予定されているパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言が注目される。というのは、足元ではFRBは年1回、市場は年2回と想定している利下げ回数に乖離がある。年2回の場合でも、早くて9月FOMCから利下げを開始する形となるが、その判断は9月のCPIを見てみないと何とも言えない。

 従って、市場の見方が変わる可能性は低い。一方で、FRBが見方を変える可能性は十分にある。特に(学者でなく)サラリーマン出身のパウエル議長が政権や議会に忖度(そんたく)する可能性は残っている。従って、この材料では基本もみ合いだが、あるなら上方向か。

 次に需給面をみてみよう。ETFフローは、ふたを開けてみないと分からないものの、7月、8月とホリデーシーズンが本格化する中で、機関投資家のフローが活発化する可能性は高くなさそうだ。当初7月4日以前ともいわれていたETH ETFのローンチも遅れている。

 7月8日以降との話だが、月内にローンチすればポジティブ材料となるが、BTCと同様に当初は少しが入り、本格的に影響が出るのは8月以降ではないだろうか。

 Mt.GOXの関連の売りは未知数だが、少なくとも買い材料にはなるまい。また半減期サイクルでマイナーの売りによる低迷期に入っており、需給的には横ばいないし、あって下方向か。

 最後に、にわかに浮上した「もしトラ」ディールの影響。今後は共和党の支持率が上がればBTC買いといった展開が到来しそうだが、次回TV討論会は9月10日で、事態が7月中に大きく動く可能性は高くなさそうだ。

 報道では、バイデン大統領を候補から下ろそうという動きがある一方で、そうした懸念を払しょくするために民主党が党大会を前倒しにしてバイデン指名を確定させようとする動きもあると聞く。

 ただ、前者の場合、民主党が一体となって支持できる候補を擁立するのは困難だという見方もあり、どちらに転んでも現段階でのトランプ優勢は変わりそうもなく、一方で、7月の段階で勝者を決めつけることはできない。

 このように材料面では7月の相場は決め手の欠ける展開が予想される。

テクニカル面で見たBTC相場見通し

BTC/USD

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 BTCは3月半ばにドル建てで史上最高値を更新して以降、横ばいレンジで推移している。5月1日に付けた5万6,000ドル台から反発、レンジの上限をトライしたが5月21日、6月7日と7万2,000ドル手前でダブルトップを形成して反落した。

 6月23日にこの上昇の半値押しとなる6万4,000ドルをクリアに割り込むと翌24日には5万8,000ドル台まで急落した。しかし、そこから反発すると、サポートだった6万4,000ドルがレジスタンスとなっている。

 先月「レンジ内で2往復して3往復目に差し掛かっているイメージで、いつレンジを上抜けしても不思議はないが、過去のパターンで見るともう少しもみ合っても不思議はない」と申し上げたが、3往復目の下値を固めている段階だ。

 今後の展開だが、その6万4,000ドルは一目均衡表の雲の下限であり、かなり強めのレジスタンス。さらに、ここを抜けても、6月の下落の半値戻しとなる6万5,000ドル、ダブルトップのネックラインとなる6万6,000ドルとレジスタンスが並んでいる。

 材料次第ではあっさり抜ける可能性もあるが、普通に考えれば上抜けにはもう少しこの水準でもみ合って力をためる必要がありそうだ。

BTC月別騰落一覧

Bloombergから楽天ウォレット作成

 恒例の月別のアノマリーでは、6月はどちらかといえば強めの月だったが、小幅陰線に終わった。7月も比較的強めだが、過去13年で8回陽線でこれも6割強で、強気予想の根拠とまでは言い難い。陽線から陰線に転じた次の月に陽線となるか陰線となるかについても目立った偏りも見られない。7月は横ばい推移となる可能性が高そうだ。

7月見通し

 6月の相場はレンジ内での横ばい圏での取引を予想する。先月は「材料的には6月中は決め手に欠くが7月以降上昇しそうな雰囲気」と申し上げた。6月は予想通りレンジ内での推移だったが、7月も決め手に欠けそうだ。

 テクニカル的にはレンジ内で3往復目に入った形で、下抜けの可能性は残るが、上昇フラッグに近い形状となっており、セオリーで言えば次は上抜けだと考えるが、それにはもう少し時間がかかりそうだ。

2024年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

5月24日 ETH ETF承認
5月23日 米下院FIT21可決、民主党からペロシ含む71名造反
5月15日 退職年金運用するウィスコンシン州投資委員会、ビットコインETF保有
5月9日 トランプ候補、暗号資産支持を明確化
5月1日 バイナンスCZ前CEO禁固4カ月
4月20日 BTC半減期
4月4日 ビットコインキャッシュ(BCH)半減期
3月13日 ETHデンクンアップデート
3月5日 ドル建てで史上最高値更新
2月29日 ブラックロックのIBITが史上最速7週間で100億ドルファンドに
2月19日 週次の暗号資産ファンドへの流入が過去最高の24.5億ドルに
2月15日 円建てで史上最高値更新
1月11日 BTC現物ETF10件ローンチ
1月10日 SEC、ETF承認(日本時間11日)

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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