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著者の愛宕伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
FRBの利下げ、3月じゃなければ5月という市場の読みをどこまで信じて良いのか

 FRB(米連邦準備制度理事会)は1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で現状維持を決定しました。結果は予想通りでしたが、パウエル議長はその後の記者会見で市場が期待する3月利下げを否定しました。

 これを受けて市場は5月利下げに予想を修正していますが、どこまで信じていいのやら。肝心なのは、FRBが重視するPCE(個人消費支出)デフレーターが2%に落ち着いていくかどうかです。改めて検証してみました。

パウエル議長は市場が期待していた3月の利下げ転換を否定

 FRBは1月30~31日に開催した1月のFOMCで、政策⾦利であるFFレートの誘導⽬標を5.25〜5.50%に据え置くことを決定しました。結果は予想通りでしたが、市場が反応したのは直後に行われたパウエル議長の記者会見です。議長は市場の期待する3月会合での利下げを、「可能性は低いと思う」と否定しました。

 特に印象に残った議長の発言は以下の通りです。

 1年前は(2%を達成するために)経済活動の軟化が必要だと考えていたが、そうではなかった。経済はより力強くなると思っており、それが問題だとはみていない。

 我々は、早すぎるリスクと遅すぎるリスクを管理する、リスク管理モードにある。委員会のほぼ全員が年内の利下げには賛成しているが、そのタイミングはインフレ率が2%への持続可能な経路を辿っているという確信を得られるかどうかにかかっている。

 より大きなリスクは、インフレ率が2%を大幅に上回る水準で安定することだ。その可能性の方が高いと思う。

 今日の会合を踏まえると、委員会が3月会合までに3月がそのときだと判断できるだけの確信に達する可能性は低いと思う。

 今回の会合ではバランスシートについて若干議論を行った。3月会合ではさらに突っ込んだ議論を行う。

(出所)FRB、楽天証券経済研究所作成

 議長の発言からすると、3月FOMCでは利下げが見送られる一方、短期金融市場の資金繰りが想定以上にタイト化して不安定にならないよう、リバースレポオペの運営を含むバランスシートの縮小方針を調整するかどうか、議論するものとみられます。

 また、3月のFOMCでは、新たな経済・物価見通しが発表されます。物価目標の対象であるPCEデフレーターが、このところFRBの見通しをやや下回って推移しており、物価見通しが幾分下方修正される可能性が高いとみています。