強い景気が物価押上げ圧力に

 このように高成長が続けば、マクロ経済の需給バランスであるGDPギャップがプラス幅を拡大し、経済にインフレ圧力を及ぼすことになります。これまで資源価格の高騰や新型コロナによる供給制約がインフレの主たる背景でしたが、マクロ経済の需給バランスがタイト化すれば、ディマンド・プル型のインフレに変貌する可能性があります。

 2日に米労働省が発表した1月の雇用統計でも、非農業部門の就業者数が前月比35万3,000人の増加となり、市場予想の18万人を大幅に上回りました。失業率も3.7%と低水準にとどまっており、24カ月も米国の失業率が4%を下回るのは1970年以降で初めてのことです。

 パウエル議長は記者会見で、景気の強さは問題視していないと発言しましたが、このまま経済の需給バランスがタイト化していけば、順調にプラス幅を縮小してきたPCEデフレーターの前年比が、FRBが目指す2%に収束していかなくなるかもしれません。

 そこで、以下では改めてPCEデフレーターの先行きを試算してみることにしました。まずは、PCEデフレーターのこれまでの推移と、FRBの物価見通しで先行きを延長したグラフを確認しておきましょう(図表2)。

<図表2 PCEデフレーターの推移とFRBの見通し>

(出所)米BEA、米FRB、楽天証券経済研究所作成

 あくまで印象論にはなりますが、FRBの見通し(図中の点線)は、これまでのPCEデフレーターの推移からすると、どこか不自然な感じがします。ちなみに、このFRBの見通しを前提にすると、今年6月のPCEデフレーターは前年比2%台半ば。とても5月や6月のFOMCで利下げに踏み切れる伸びではありません。