イラン経済を疲弊させた欧米の制裁

 イランに対する制裁(簡単に言えばお仕置き)が続いています。2000年代半ばから断続的に国連、米国などがイランに制裁を科しています。これにより、イラン産原油を輸入する国が減りました(日本もしかり)。核開発を進めるイランをけん制するために国際社会がイランの活動を抑制しているのです。

 以下の図のとおり、制裁をきっかけにイランの原油輸出量は目に見えて減少しています。制裁を科す側の思惑通りです。このことが主因となり、先述のとおりイランの輸出総額は2000年から2021年にかけて半分以下になりました。

 制裁がイランに与える影響は原油輸出量の減少やそれによる輸入総額の減少だけではありません。図中のオレンジの点線のとおり、IMF(国際通貨基金)が公表しているイランの財政収支均衡に必要な原油価格は、制裁時に上昇、制裁解除時に下落しています。

 イランの財政事情が急激に悪化する制裁時は、財政を安定させるために一定水準の原油価格が必要になります。原油輸出量が減少して失われる収入を、原油価格という単価を引き上げることで補う、という考え方です。

図:イランの原油生産量と輸出量 単位:百万バレル/日量

出所:各種資料およびOPECのデータより筆者作成

 制裁が科される前、わが国日本もイランから多くの原油を輸入していた2000年代前半の同価格は30ドル程度でした(2000年から2005年の平均)。しかし制裁が始まり、原油輸出量が急減しはじめたことを機に、同価格は上昇しはじめ100ドル超が常態化しました。

 制裁解除期間は一時的に40ドル程度まで低下したものの、米国による制裁再開を機に急騰し、足元では300ドル前後で推移しています。

 原油相場が300ドル程度でないと財政収支が均衡しない状態は、産油国として異常な状態だと言えます。IMFのデータによれば、イランと同じ湾岸産油国であるサウジラビアの2023年の同価格は80.9ドル、イラクが75.8ドル、オマーンが72.2ドル、クウェートが70.7ドル、UAEが55.6ドル、カタールが44.8ドルです。生産量の規模を考慮すれば、これらの平均は70ドル台前半だと考えられます。

 イランの300ドルが異常なまでに高いことが改めてわかります。異常な高さは国内情勢が大変に疲弊していることを示唆しています。制裁はイラン経済に大きすぎる打撃を与えていると言えます。