イランの輸出主要品目と相手国の変化

 映画「海賊と呼ばれた男」では、英国に自国の石油資源を搾取されているイランに、米英の包囲網をかいくぐって日本の石油会社がタンカーを仕向ける様子が描かれています。1950年代の実話をもとに作られた映画です。

 タンカーが無事イランの港に到着した時、イランの市民がイラン経済に希望を与えたと賞賛し、そして川崎港に帰港した時、日本の市民が日本経済を支えたと歓喜するシーンがあります。このタンカーの航行は、欧米の圧政にあえぐ国が多かった時代に、世界中に驚きを振りまいたと言われています。

 歴史的に産油量が多いイランはOPECの発足メンバーです。現在もOPECプラス(OPEC12カ国、非OPEC11カ国の合計23カ国)の一員です。原油などの「鉱物」を含んだ、近年のイランの輸出額は以下のとおりです。

図:イランの輸出額増減上位5分類 単位:百万ドル

出所:OEC(The Observatory of Economic Complexity)のデータより筆者作成

 実は、イランの輸出額の総額は2000年から2021年にかけて半分以下になっています。急減の主因は「鉱物」輸出の大幅減少(10分の1以下)です。先述の通り、イランは主要な産油国の一つですが、その石油関連品目の輸出が急減しています。以下は、このことに関連するイランの輸出相手国です。

図:イランの輸出相手国増減上位5カ国 単位:百万ドル

出所:OEC(The Observatory of Economic Complexity)のデータより筆者作成

 西側諸国向けの輸出が急減しています。このほとんどが「鉱物」、つまりイランの主な輸出品目である石油関連です。イランの西側向けの石油輸出が激減したのは、西側の石油需要が激減したためではありません。西側がイランから意図して輸入しないようにしているのです。