いまも残る「あの呪縛」

 フォルクスワーゲン問題の呪縛とは、2015年9月に発覚したドイツ自動車大手のフォルクスワーゲンが違法な装置を使って不正に排ガス浄化装置のテストを潜り抜けていたことが発覚した際に生まれた、同社の主要車種であるディーゼル車への信用が損なわれ、同車の排ガス浄化装置に多用されているプラチナの需要が激減して価格が暴落するとささやかれた、まことしやかなうわさによる価格下押し圧力のことです。

 以下は、プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題のあらましです。問題発覚当時、多くの市場関係者が、プラチナはもうダメだ、プラチナの需要は激減する、プラチナ価格は暴落する、などとうわさをしました。中にはプラチナはもうダメだから金(ゴールド)を買った方がよい、などとプラチナをだしにして金(ゴールド)を売り込もうとする営業マンもいました。

図:プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題

出所:筆者作成

 こうしたまことしやかなうわさ話が支配的となり、プラチナ価格は長期的な低迷期に入ることを余儀なくされました。まさに彼らが思い描いた通りの展開となったわけです。

図:国内の金(ゴールド)とプラチナの価格推移(税抜) 単位:円/グラム

出所:楽天証券のデータをもとに筆者作成

 上図のとおり、問題発覚前まで長年にわたってプラチナとの価格差が活発に議論されていた金(ゴールド)の価格が急上昇しても、プラチナ価格は低迷したままです。その意味では、フォルクスワーゲン問題の呪縛は続いていると言えるでしょう。