中東地域の食料不安が顕在化

 FAO(国際連合食糧農業機関)の報告では、ガザ地区の人口の53%にあたる120万人および、同地区周辺のレバノン、イエメン、シリアなどの合計約3,350万人が、今回の紛争以前から深刻な食料不足に陥っていました(2022年)。

 現在、ガザ地区の全人口(約230万人)が緊急の人道支援を必要としていますが、戦争が激化した場合、食料不足はガザ地区周辺、激化の程度(規模大・期間長)によっては周辺地区や世界全体に波及する可能性があります。

図:中東地域で食料不安に陥っている人の数とシェア(2022年)

出所:世界銀行の資料をもとに筆者作成

 以下は、世界全体で食料不安と栄養不足に陥っている人の数です。2022年の世界人口は79億6,900万人程度でした(国連人口基金のデータより)。2022年時点で世界の人口の10分の1強(およそ9億人)が食料不安に、10分の1弱(およそ7億3,500万人)が栄養不足に陥っています。

図:世界全体で食料不安・栄養不足に陥っている人の数 単位:百万人

出所:FAO(国連食糧農業機関)データをもとに筆者作成

 こうした状況の中で「二重ショック」が起きれば、世界全体で食料不安が拡大する可能性があります。

 世界銀行の別のエコノミストは、「深刻なエネルギー・ショックが起きれば、すでに多くの途上国で発生している食料価格のインフレを加速させるだろう。今回の中東での紛争がエスカレートすれば、この地域内だけでなく、世界全体の食料不安が拡大するだろう」という趣旨のコメントをしています。