「二重ショック」で食料価格高も

 世界銀行のエコノミストは戦争激化時の見通しについて、「中東での紛争がエスカレートすれば、世界経済は二重ショック(a dual energy shock)に直面するだろう」と述べています。

 同見通しは、中東情勢が悪化した場合、原油だけでなく天然ガスや石炭、さらには化学肥料の価格が上昇する可能性があるとしています。

 中東における紛争がさらに激化すれば、紛争に直接悩まされている地域だけでなく、その周辺国、ひいては世界レベルでも、食料不安が目立つ可能性があるとしています。以下が、想定される経路(原油価格上昇→食料価格上昇・供給減懸念増)です。

図:原油高が食料供給者(関連企業・農家など)にもたらす影響

出所:筆者作成

 食料の供給者(関連企業や農家など)は、絶えず原油価格の動向がもたらす影響を受けています(原油価格の動向は川上寄り、食料の供給者は川中付近)。原油価格が上昇すると、ガソリンや軽油などの輸送や機器の運転を支える燃料のコストが増えます。また、ビニールやプラスチックなどの原油由来の原材料コストが増えます。

 その他、原油価格が上昇すると、連動する傾向があるLNG(液化天然ガス)価格が上昇して火力発電の燃料コストが上昇し、食品の供給に欠かせない電気代が上昇したり、化学肥料を製造するために欠かせない燃料のコストが上昇したりすることも、食料価格を押し上げる要因になり得ます。

 原油価格が上昇して食料価格が上昇すれば、国や地域によっては食料の供給量が減少する場合があります。仮に原油相場が「未知の領域」に達するほど大暴騰する事態になれば、食品価格の大幅上昇や供給量の大幅減少などは避けられないかもしれません。

「二重ショック」は、燃料や発電コストが急増することでもたらされる直接的なショックと、食品価格が大幅に上昇したり供給量が大幅に減少したりしてもたらされる間接的なショックの同時発生(どちらも原油価格暴騰起因)を指しているといえるでしょう。