原油価格は史上最高値更新も

 世界銀行は同見通し内で、原油価格の動向について、戦争激化の程度別(小規模、中程度、大規模)の三つのシナリオを示しました。

図:原油(ブレント)価格の推移と世界銀行の戦争激化時のシナリオ 単位:ドル/バレル

出所:世界銀行のデータ・資料をもとに筆者作成

 戦争激化の程度が小規模の場合に想定される原油価格の水準は93ドルから102ドル、中程度は109ドルから121ドル、大規模は140ドルから157ドルです。規模の大小にかかわらず、戦争が激化すれば、原油価格が上昇することを想定しています。

 いずれのシナリオも、過去の産油国周辺での大規模なリスク発生時の原油生産量の減少分を考慮して作られています。小規模は2011年のリビア内戦(150万バレル減)程度、中規模は2003年のイラク戦争(230万バレル減)程度、大規模は1973年から1974年の第一次石油危機(430万バレル減)程度です。

図:産油国周辺での大規模リスク発生時の原油生産量減少分と原油価格の変動率

出所:世界銀行の資料をもとに筆者作成

 戦争激化の程度が大規模だった場合、原油価格は2008年7月につけた史上最高値(WTI[ウエスト・テキサス・インターミディエート]、ブレントともに147ドル台)を更新する可能性があることが示唆されています。これが冒頭で述べた「未知の領域」への突入です。