ウクライナ戦争勃発が遠因

 足元、ガザ地区を実効支配している「ハマス」(イランの支援を得てイスラエル側に対する武力行為を行っている。そのほか、民衆の支持獲得のためもあり、同地区で慈善活動や教育支援も行っている)は、ヨルダン川西岸でイスラエル側と和平交渉を目指す「ファタハ」と一線を画すようになっています。

 また、トランプ前大統領の時代にUAE(アラブ首長国連邦)やバーレーンなどのアラブ諸国が、ハマスやファタハを介さずにイスラエル側と国交を結んだほか、足元、アラブの盟主とされるサウジアラビアが国交正常化を模索したりしているとされています。

 支援をしていたはずのアラブ諸国がパレスチナを置き去りにしつつ、イスラエル側に接近する動きが目立ち始めています。

図:イスラエルを取り巻く各種環境(2023年10月中旬時点)

出所:筆者作成

 しかしハマスは、イランの支援を受けています。イランは、非西側産油国の集団「OPECプラス」のほか、先日発足が決定した非西側主要国の集団「BRICSプラス」の一員でもあります。そしてそのイランの支援を受けるハマスもまた非西側寄りだと言えます。

 ファタハと分裂したり、西側寄りのアラブ諸国がパレスチナを飛び越えてユダヤ人側と国交を正常化したりしたことで、ハマスはある意味「しがらみなく」イランの支援を受けられる(イランは支援できる)ようになったとも言えます。

 一方、イスラエル側はアメリカと緊密に連携しているため、比較的西側寄りだと言えます。西側・非西側間の世界規模の分断は、ウクライナ危機勃発以降、際立っているわけですが、こうした分断もまた、イスラエル側とハマスの戦争の一因だと言えると、筆者は考えています。

 ウクライナ危機勃発以降、際立っている西側・非西側間の分断が改善される気配は皆無です。このため、今回のハマスとイスラエルの戦争も長引く可能性があります。

 このことは、金(ゴールド)相場にかかる有事起因の上昇圧力や、そして原油相場に供給減少懸念起因の上昇圧力が継続する可能性があることを意味していると言えるでしょう。(別文脈の下落要因があれば下落する場合があることに注意が必要)。