業績見通しの改善が株式復調の追い風に

 債券市場の金利が落ち着きを取り戻せば、株式市場はファンダメンタルズと呼ばれる企業業績見通しに目を向けると思われます。今後発表が本格化する第3Q(7-9月期)の決算発表とガイダンス(業績見通し)を見極める必要はありますが、10月入りした市場は来年(2024年)の業績動向を視野に入れていく可能性が高いと考えています。

 そこで参考までに、図表3でS&P500ベースとナスダック100指数ベースそれぞれの暦年EPS(1株当たり利益)の実績と市場予想平均(2023年、2024年、2025年)を示しました。

 特徴として、S&P500やナスダック総合指数の時価総額ウエートで大きな割合を占めるナスダック100ベースのEPSが成長を続け(2023年は前年比+4.6%増益)、2024年は+20.7%、2025年は+14.8%と二桁成長し、市場平均(S&P500ベース)のEPS成長をリードしていくと予想されています。

 注目したい点としては、本年の主役となった「生成AI」から来年以降は「AGI」の効果を織り込んでいくと期待されることです。AGI(Artificial General Intelligence)とは、「シンギュラリティー」とも呼ばれる(人間の知能を超える)「汎用人口知能」の略称です。

 AGIの誕生が近づき、進化し続けるAIが製造、運輸、金融、サービスなどほぼ全ての産業に組み入れられることで、導入した企業の効率性や生産性が改善。中期的に収益や業績が拡大することが予想されます。こうしたイノベーションの進化とその経済的効果を考慮し、米国株式の軟調場面では、押し目買いや積み増し買いが長期的資産形成に寄与すると考えています。

<図表3>企業業績はナスダック主力株がリードして拡大する見通し

*2023年、2024年、2025年の予想EPSは市場予想平均
(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年10月11日)

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