超長期的には均衡点変化の兆しが見えた

 以下のとおり、世界全体で見た場合でも、収穫面積はほぼ横ばいです。それにもかかわらず、生産量が増えているのは、単収(一定面積あたりの生産量)が増えているためです。収穫面積を増やすことが容易でないことは、この半世紀以上、同面積が横ばいで推移していることから伺えますが、単収は技術革新で増やすことができます。

図:小麦の生産・消費量、収穫面積(世界全体)

出所:USDA(米農務省)のデータをもとに筆者作成

 その単収は、この60年間で約3.5倍に増加しています。すさまじい技術革新が起きたと感じます。人類は、今後も単収を増加させることは、できるのでしょうか。もし実現できれば、仮にウクライナ危機が長期化し、同危機起因の供給懸念が続いたとしても、世界的な需給ひっ迫は回避できるかもしれません。

 しかし、すでに単収を約3.5倍にした技術革新を実現してしまったことを考えると、近い将来、単収の伸びは、限界に達する可能性があります。

 面積や単収の話だけでなく、近年目立っている異常気象(異常な高温、低温、多雨など)で生産量が減少することもあるでしょう、また、それがきっかけでバッタが大量発生し、食物が食いつぶされるケースもあるでしょう(詳細は以前のレポート「バッタとウイルスのダブルパンチが穀物価格を揺るがす!人類VS未知との戦いは続く」をご参照ください)。

 西側での需給ひっ迫懸念(ウクライナ危機長期化起因)、収穫面積の増加の鈍化、異常気象による生産減少懸念、新興国の人口増加および食文化の変化による需要増、など超長期視点でいくつもの小麦価格を支える材料が存在することを考えれば、現在の水準が長期視点で定着する(均衡点の変化(パラダイムシフト)が起きる)可能性はゼロではないと、筆者は考えています。

 日々の細かい価格変動と、超長期視点の価格変動の両方を意識することが、小麦相場を分析する上で欠かせないと考えます。

図:穀物価格の推移(再掲) 単位:ドル/トン

出所:世界銀行のデータをもとに筆者作成

[参考]穀物関連の具体的な投資商品例

国内株式・ETF

丸紅
農産物上場投資信託
穀物上場投資信託
小麦上場投資信託
とうもろこし上場投資信託
大豆上場投資信託

外国株式・ETN

ディアー
コルテバ
ニュートリエン
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド
ブンゲ
ヴァンエック・アグリビジネスETF
インベスコDBアグリカルチャー・ファンド

商品先物

国内 トウモロコシ 大豆
海外 トウモロコシ 大豆 小麦 大豆粕 大豆油 もみ米

CFD

トウモロコシ 大豆 小麦