ロシア・ウクライナへの依存度を確認

 筆者は、ウクライナ危機は長期化すると考えています。危機という混乱を利用して存在感を高める国(危機終息を望まない国)が出てきたり、危機を終わらせるための組織(国連)が機能不全を起こしていたりするためです。勃発から1年半以上が経過し、次第に人々の頭の中から危機の存在が薄れつつあることも、危機を長引かせる大きな要因になり得ます。

 このため、ウクライナとロシアの小麦が、危機勃発前と同じように供給される日は当面来ないと考えています。今後、もともとウクライナとロシアが小麦を輸出していた国々では、じわじわと負の影響が出始めると考えられます。以下は、危機勃発直前(2021年)のウクライナとロシアが小麦を輸出していた国々です。

図:ロシアとウクライナの主要輸出先(金額ベース 上位10位)(2021年)

出所:OEC(The Observatory of Economic Complexity)のデータをもとに筆者作成

 危機を勃発させてウクライナの穀物を事実上掌握したことで、ロシアはもともとウクライナの主要輸出国だった国々にも影響力を行使できるようになりました。

 ロシアにとって「資源の武器利用」は常套手段です。「自国(ロシア)の小麦を出さない」に加え、「ウクライナの小麦を出させない」というカードをちらつかせるだけで、依存度が高い国に心理的な圧力をかけることができます。

 ロシアとウクライナへの依存度(合計)は、トルコが87.2%、パキスタンが77.5%です。そのほか、先日「BRICSプラス」の一因になることが決まったエジプト(72.7%)、エチオピア(55.7%)、サウジアラビア(43.6%)も、強く依存しています。

 こうした依存度が高い国々は、ロシアの「言うことを聞く」ことによって、その見返り(小麦の融通)を享受できるかもしれません。