米国株式を資産形成のコアに据える意義

 今年も7月に入り下半期を迎えました。上半期を終えた6月末時点での長期市場実績を米国株、世界株、日本株の総収益指数(配当込みトータルリターン)で比較してみました(図表3)。出色のパフォーマンスは「円建ての米国株」で、約30年前(1993年初)を起点とすると約21.4倍に成長してきました。

 上半期は「AIブーム」に加え、昨年からの為替の円安(ドル高)トレンドに伴う為替差益が寄与し、円建て総収益パフォーマンスが一段と向上しました。円換算の世界株式(MSCI世界株価指数の総収益指数)もパフォーマンスが1993年初対比で約11.8倍となりました。

 日本株(TOPIX(東証株価指数)の総収益指数)は、近年こそパフォーマンスが改善しましたが、1993年初対比では約2.8倍にとどまっています。米国は世界のGDP(国内総生産)規模で1位を続け、移民効果で総人口や労働人口が伸び続けている世界有数のエネルギー・農産物産出大国です。

 軍事上の優位性、イノベーション(技術革新)や資本主義経済をけん引する能力の高さで世界のコア(中核)である状況に変わりはありません。

 なお、MSCI指数ベースで比較すると、米国株式市場の予想平均ROE(株主資本利益率)は約18%と他国市場を圧倒しています。株主資本に対する利益率が高いことに加え、活発な自社株買いに象徴される「株主重視」の経営姿勢と、自社の株価水準に対する経営者の意識度合いは世界一といわれています。

 また、過去の長期市場実績で、米国の個人投資家には「Stay Invested」(長期投資こそ資産形成の本質である)との投資教育が根付いており、株価が一時的に下落した際は「押し目買い」や「積み増し買い」の背中を押してきました。今後についても、長期の視点で米国株式を中心とする世界分散投資を構築することが合理的と考えています。

<図表3>米国株、世界株、日本株の長期総収益を比較する

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1993年初~2023年6月)

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