英中銀が大幅利上げ、米FRB議長「年内2回利上げ良い予想」

 先週22日、BOE(英中央銀行イングランド銀行)は金融政策委員会で、事前の市場予想を上回る0.50%の利上げを決定しました。前回まで2会合連続で0.25%の利上げでしたが、利上げ幅を再拡大し13会合連続の利上げとなりました。この決定を受けてポンドが円に対し上昇し、ドルも円に対し上がり、為替は円安方向に振れました。

 また、22日のニューヨーク外国為替市場では、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が議会証言で少しタカ派寄りの発言をしたことも注目されました。

 パウエル氏は14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見では、次回7月のFOMC会合はデータ次第で金融政策の判断が変わる「ライブ」になるだろうと指摘していました。しかし、22日の議会証言では、FOMC参加者の大多数が年内あと2回の利上げがあるとみていることについて「かなり良い予想だ」と述べ、2回の利上げを疑問視する市場の見方に釘を刺しています。

 BOEの0.50%の利上げとパウエル氏の議会証言を受けて、それまで1ドル=142円台を挟んで動いていたドル相場は143円台に上昇しました。

 そして23日には、米経済の景況感を示す6月PMI(購買担当者景気指数)が発表され、製造業は予想を下回りましたが、サービス業は予想を上回りました。

 また、サンフランシスコ連邦準備銀行のデイリー総裁が、FRBが年内に2回の追加利上げをすることが「非常に理にかなった予想だ」と発言したことによって、FRBの利上げ継続観測が強まりました。

 そして、ドルは年初来高値となる1ドル=143.87円近辺までドル高円安が進み、高値圏で週を超えました。

為替介入の選択肢「排除しない」、円安けん制のトーン強まる

 今週は、1ドル=144円に乗せたことから、昨年9月の円買いドル売りの為替介入時の為替水準である1ドル=145円超が意識され、介入に対する警戒感が強まることが予想されます。先週20日に142円台を付けた直後に、鈴木俊一財務相は「日々、為替の動向は注視している」と述べるにとどめ、まだ強い語調ではありませんでした。しかし、週明け26日には、財務省で為替介入の実務を取り仕切る神田真人財務官の発言のトーンが一段上がりました。

 神田氏は26日、記者団の取材に「(為替相場の円安の動きについて)足元の動きは急速で一方的だとみられる。高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きに対しては適切に対応していきたい」と述べました。

 また、介入実施の可能性を問われると「行き過ぎた動きがあった場合には、適切な対応を取るわけであり、それはどんなオプション(選択肢)も排除しているわけではない」と強調し、臨戦態勢といってもいい強い姿勢を示し市場をけん制しました。

 神田氏の発言の後はあまり円高に動きませんでしたが、その後、日本銀行が6月の金融政策決定会合の「主な意見」を発表し、YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)を巡り「早い段階で、扱いの見直しを検討すべきだ」との意見があったことが示されました。このことから、次回7月会合での金融政策修正への期待が高まりました。

 さらに、松野博一官房長官がこの日の夕方の記者会見で、円安進行に対し「政府としては為替市場の動向を高い緊張感を持って注視し、行き過ぎた動きには適切に対応する」と為替介入の可能性を示唆する発言をしました。この発言によって為替相場では円買いが強まり、ドル相場は一時1ドル=143円割れとなりました。

 しかし、その後再び143円台に戻しています。政府高官から円安をけん制する口先介入が相次いだことから、円安進行を止める効果はしばらく続きそうです。

 為替相場が1ドル=144円を超え、145円の円安水準に近づくにつれて、政府や通貨当局による市場けん制の発言はさらに強まることが予想されます。当局の動向にはより一層の注意を払う必要がありそうです。岸田政権の支持率が低下してきていることから、物価高につながる円安に対し、より神経質になってくるかもしれません。

 また、介入のタイミングについては、日銀が7月27、28日の次回の政策決定会合で政策修正を見送った場合、為替市場で投機的な動きが高まり、昨年10月以来の1ドル=150円の円安水準が視野に入る時期が一つのタイミングかもしれません。それまでは、政府は口先介入によって市場をけん制し続けることが予想されます。