ロシアや戦争を否定しない国が多数存在

 ここからは、同サミットに参加した国々の考え方(思想)について、考察します。以下は、昨年3月以降、国際連合の総会で行われたウクライナ危機関連の決議において、同サミット参加国がどのような回答をしたのかを示しています。

図:グローバルサウスの声サミット参加国のウクライナ危機関連の国連決議の動向

出所:国際連合およびインド外務省の資料をもとに筆者作成

「賛成」がロシアを否定する回答です。それ以外の「反対」「棄権」「未投票」は、いずれもロシアを否定しない回答です。図のとおり、いずれの決議においても、同サミット参加国による非賛成(反対+棄権+未投票)は、非賛成全体の80%前後です(オレンジ線)。同サミット参加国が、非賛成の温床になっていると言えそうです。

 また、同サミット参加国の少なくとも30%、多い場合は60%が、非賛成の姿勢を示しています。恒常的に非賛成を選択する国は少なくありません。

 例えば、7回の決議で一度も賛成しなかった(反対、棄権、未投票のいずれかを選択し続けた)国は、全体(125カ国)の20%にあたる25カ国あります。

 イラン、キューバ、ベネズエラなど米国の制裁を受けている国々や、ベラルーシ、シリアなどロシアと政治的な関わりが深い国々、コンゴ、アゼルバイジャン、赤道ギニア、スーダンなど産油国(OPECプラスの国々)です。

 こうした国々のロシアを否定しない行動に、西側を否定する意図が含まれているように見えてきます。実際、近年の同サミット参加国の自由民主主義指数※(平均)は低下傾向にあります。

図:グローバルサウスの声サミット参加国の自由民主主義指数(平均)

※自由民主主義指数:ヨーテボリ大学(スウェーデン)のV-Dem研究所が公表。行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由度や民主度をはかる複数の観点から計算され、0と1の間で決定。0に近ければ近いほど、非民主的な傾向が強く、1に近ければ近いほど、民主的な傾向が強いことを示す。

 近年の同サミット参加国の思想は、西側が「よし」とする自由で民主的な思想と正反対の方向に進んでいます(同指数が低下傾向)。こうした流れがロシアを否定しない回答に導いていると、考えられます。