戦争終結無くして電気料金引き下げなし

 以下のとおり、足元の火力発電に用いる各種燃料の価格は、高水準を維持しています(ピークは越えたが、足元の水準は過去と比較して高い状態にある)。この点は、長期視点で電力価格を高止まりさせている要因です。

図:燃料の輸入価格の推移 単位:千円

 ウクライナ危機勃発直後のピークからやや下落したとはいえ、2020年3月(新型コロナがパンデミック化した月)に比べれば、原油は1.7倍、石炭(一般炭)は4.6倍、LNG(液化天然ガス)は2.0倍です。こうした燃料の輸入価格は、まだまだ、まだまだ、高いのです(電源構成の31.0%を占める石炭の価格は、統計史上類を見ない水準を維持している)。

 記録的な高止まりの背景に挙げられるのが、ウクライナ危機が勃発し、非西側諸国からの供給が滞る懸念が底流していることです。非西側の筆頭であるロシアは、原油、天然ガス、石炭の輸出国上位に名を連ねています。

 同国の原油輸出シェアは13.2%(世界2位)、天然ガスは17.0%(同1位)、石炭が17.2(同3位)です(いずれも2021年。原油と天然ガスは金額ベース、石炭は数量ベース)。

 ウクライナ危機勃発を機にロシアは「出さない」姿勢を鮮明にしています。「西側諸国の制裁への応酬」として行われているロシアの出し渋りが、わが国日本の燃料の輸入価格を高止まりさせている(下げさせない)要因になっています。

 燃料の輸入価格を本格的に下落させるために必要なことは、「戦争を終わらせること」です。ドル/円を円高方向に向かわせることも一つの方法ですが、戦争を終わらせて燃料価格の高止まりを解消するほうが、根本解決につながります(ドル/円を円高方向に仕向けても、そもそもの燃料価格が高ければ、ドル/円が円安方向に向かった場合、電力価格高が再燃してしまう)。