値上げの本番は今年の冬か!?

 とはいえ直ちに、電気料金が高くなるわけではありません。5月16日に西村経済産業大臣が閣議後に行った記者会見では以下の旨の話がありました。

  • 直近の燃料価格動向を反映した燃料費調整額を算出した。
  • 2023年度のFIT賦課金(再生可能エネルギー賦課金)は低下した。
  • 電気料金の激変緩和策を継続する。
  • 上記策により、7社のうち5社が値上げ申請前よりも低い料金水準になる。

 以下は、5社の一つである東京電力の例です。

図:標準的な家庭における東京電力管内の電気料金の試算結果(経済産業省)
※東京電力管内の標準的な家庭(30A・400kWh/月)を想定

出所:経済産業省の資料をもとに筆者作成

 今回の国による査定により1万6,522円に値上がりすることが想定されましたが、経産省は燃料費調整、再生可能エネルギー賦課金、激変緩和策によって1万2,190円になると試算しています。

 燃料費調整は、過去数カ月間の燃料(原油、天然ガス、石炭)の輸入価格をもとに算出した基準額から、直近が高ければ増額、安ければ減額する調整を施す措置です。今回の基準額は比較的高値圏で推移していた2022年11月~2023年1月時点の価格をもとに基準額を算出したため、調整する際は減額することとなりました。

 再生可能エネルギー賦課金は、法令に基づき毎年3月に経済産業大臣が決定します。再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)において、電力会社が買い取る費用の一部を、電気を利用する人から徴収するお金です。2023年のこの金額は低下しました。

 最も大きな値引きの役割を果たす激変緩和対策は、電気(都市ガスも)を利用している家庭や企業が手続き不要で値引きを受けることができる、国の支援策です。国が電気の小売業者になどに、値引きの原資を支援します。値引き単価は、低圧契約(主に家庭)で7円/kWh、高圧契約(主に企業)で3.5円/kWhです。

 直ちに電気料金が高くなるわけではないとしたのは、各種施策の効果が見込めるためです。ただし、注意点があります。最も大きな値引きの役割を果たす「激変緩和策」が、今年9月使用分(10月検針分)までの時限的措置であることです(最終月の値引き額はほぼ半減。新電力などでは最終月が前後する場合がある)。

 激変緩和策が終わるタイミングは、電力の最需要期である「冬」の直前です。このため、激変緩和策終了から程なくして、電力が需給ひっ迫した場合、われわれ市民が受ける電気料金上昇による負のインパクトは、いっそう大きくなる可能性があります。