「利上げ停止」は株価が復調に向かうサインか

 一方、FRBは5月2~3日のFOMCで0.25%の追加利上げを決定し、声明文は利上げサイクルについていったんの停止を示唆しました。直後のパウエルFRB議長による記者会見やその後のFRB高官の発言によると、いまだ「利上げが終了した」とは断言できません。

 ただ、仮に5月の利上げで政策金利が今回の金利サイクルのターミナルレート(到達点)に達したと想定すれば、株式が復調傾向をたどる兆候と考えられます。実際、過去の利上げ終了後の米国株の平均パフォーマンスは比較的堅調でした。

 図表3は、1980年以降における7回の政策金利サイクルの利上げ最終日(利上げ打ち止め日)からのS&P500の1年後騰落率とその平均騰落率(+15.9%)を示したものです。全7回の1年後騰落率のうちマイナスとなったのは1回のみで、残る6回全てで株価は二桁以上の上昇率を記録したことがわかります。

 例えば最近の政策金利サイクルの利上げ最終日は2018年12月19日で、S&P500は翌2019年12月19日まで27.9%上昇しました。

 これらはあくまで過去の市場実績で、将来の株式リターンを保証するものではありませんが、市場が概して「利上げ停止(打ち止め)」を好材料にしてきた傾向を示すものです。金利先物市場は、政策金利がすでにピークアウトを迎え、年内に利下げに転じる軌道を予想しています。

 今後、インフレ(物価上昇率)減速や景気後退の可能性が高まれば、FRBが金融政策のピボット(政策転換)に踏み切ることも視野に入ってきます。FRBがすでに利上げ停止に至ったと仮定すると、米国株は上述した債務上限問題などのリスク要因に揺れながらも年末に向けて復調傾向をたどる可能性が期待できると考えています。

<図表3>利上げ打ち止め後の米国株は上昇しやすかった

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成

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