公的債務上限問題を巡る不確実性に要注意

 米国市場では、連邦政府が国債を発行して調達する債務総額が、定められていた上限(31.4兆ドル)に達したことで、「デフォルト(債務不履行)」の危機に直面するとの不安が浮上しています。

 1917年に成立した法律によって連邦政府の債務の上限が定められ、上限を超えると新たに国債を発行して資金を調達することが困難になります。

 このため、連邦債務が債務上限に到達する場合、原則として議会で法案を成立させて債務上限を引き上げる(もしくは債務上限を一時的に無効化する)必要があります。現在は米財務省が臨時かつ特別な資金繰りで対応していますが、イエレン財務長官は「6月1日にも行き詰まる可能性がある」と議会に対し警告しています。

 財政面の資金繰りが枯渇すると政府機関の一部が閉鎖され、国立公園、博物館、図書館など国が管理する施設が閉鎖に追い込まれ、貿易手続きに遅れが生じ、社会保障や国防などといった国家の維持に必要な支出が滞る可能性があります。結果的に、国債の利払いや償還が行えないデフォルトに陥るリスクも高まります。

 2011年の「米国債ショック」では、同様の混乱を受け8月5日にS&P社が米国債の信用格付けを引き下げ、米国や世界の株価を急落させた経緯が知られています。現在、上下両院の議会勢力はねじれており、与野党が対立する中債務上限問題を巡る早期解決には懐疑的ムードが根強く、株式市場の重しとなっています。

 図表2は、米国債のデフォルトリスクに備える保証料率(CDS:Credit Default Swap)の推移を示したものです。直近の数値は2011年の米国債ショック当時の水準を上回って上昇。市場が先行き不透明感を強くしている状況がわかります。当面も株価変動要因として警戒を要する場面が続きそうです。

<図表2>米国債のデフォルトリスクを巡る警戒感が強まっている

(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2011年初~2023年5月17日)