「脱米ドル」ではなく「脱西側」を目指す非西側

 リーマンショック後、欧米が大規模な金融緩和を行ったため、異次元のレベルまで信用が膨張し、信用収縮への不安が急拡大しました。同ショックは、西側がよしとする、自由な競争を柱とした経済体制を揺るがしただけでなく、非西側の西側への支持を失うきっかけになったと筆者はみています。

図:リーマンショックを起点に考える、非西側の金(ゴールド)保有増加の過程

出所:筆者作成

 また、2010年ごろから、西側は経済回復のため「環境問題」と「人権問題」を提唱しはじめましたが、「環境問題」を推進したことで、産油国・産ガス国との軋轢(あつれき)を大きくし、「人権問題」を主張したことで、独裁国家からの反発を招きました。

 西側がよかれと思ってしたことにより、西側と非西側の対立が激化してしまったわけです(その延長線上に、ウクライナ危機勃発があると、筆者は考えている)。

 リーマンショック後、西側と非西側の対立が激化する中、非西側は「脱米ドル」ではなく「脱西側」を進めてきたと言えるでしょう。こうした中、非西側は、米ドルでもないユーロでもないポンドでもない通貨、「脱西側」を支えることができる通貨を、模索してきたと考えられます。

 実際、以下の図のとおり、リーマンショック後にロシア、中国、インド、トルコ、カザフスタンなど、名だたる「非西側」諸国が金(ゴールド)の保有量を増やしています。

図:リーマンショック以降、金(ゴールド)の保有量増加が目立った国 単位:トン

出所:WGCのデータをもとに筆者作成