中銀の方針転換はウクライナではなくリーマン

 ここまで、短期的な高値更新・高値到達の状況と背景を確認しました。ここからは中長期視点で考えていきます。

 世界的な金(ゴールド)の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が公表した最新の四半期の統計によれば、中央銀行の金(ゴールド)の買い越し幅(購入-売却)は、2023年第一四半期(1月から3月まで)も記録的な高水準(228.4トン)でした。この量は、第一四半期として過去最高です。

 以下は年間ベースの買い越し幅です。仮に年内、第一四半期と同量の買い越し幅が続けば、2023年は史上最高となった2022年に次ぐ記録的な高水準になります(2022年は1,078.5トン)。

図:中央銀行の金(ゴールド)買い越し幅 単位:トン

出所:WGCのデータをもとに筆者推計

 上図のとおり、2010年以降、買い越し(純購入)が続いています。その2年前の2008年から、急激に売り越し(純売却)幅が小さくなりはじめました。2008年は、リーマンショックが起きた年です。

 中央銀行が金(ゴールド)の保有量を増やすのは、「脱米ドル」のためであり、その背景には「ウクライナ危機」があると報じられています。筆者はこの点は、若干膨らませる必要があると考えています。「脱米ドル」ではなく、それを含んだ意味を持つ「脱西側」、背景は「ウクライナ危機」ではなく、その14年前(2008年)に起きた「リーマンショック」です。