短期:「三つの上昇圧力」が価格を支える

 短期視点の、価格動向の振り返りと今後のポイントについて述べます。以下は、主要銘柄の騰落率です。このおよそ半年間で、プラチナ価格は10%強、上昇しました(先ほど述べた、ニューヨークプラチナ先物が1年ぶりの高値水準に達したことと関連)。

図:主要銘柄の騰落率(2022年10月26日と2023年4月25日を比較)

※コモディティ銘柄はドル建て

出所:QuickおよびマーケットスピードⅡのデータをもとに筆者作成

 プラチナのほか、ドイツDAX(ドイツの主要株価指数)、上海総合(中国の主要株価指数)、S&P500種指数、ダウ工業株30種平均、日経平均株価といった世界各地の主要国の株価指数、そして金(ゴールド)が上昇しました。

 ざっくり言えば、この半年間、「プラチナ高・株高・金(ゴールド)高」だったわけです。この半年間における三つの関係は、以下のように示すことができます。「三つの上昇圧力」が、足元のプラチナ価格を上向かせていると言えます。

図:プラチナ市場にかかる「三つの上昇圧力」

出所:筆者作成

 米国の利上げ温度感低下がもたらす「株高」が、プラチナの産業向け需要を拡大させる期待を増幅し(上昇圧力1)、同時に「金(ゴールド高)」が貴金属相場全体の上昇ムードを醸成している(上昇圧力2)と考えられます。加えて、主要鉱山生産国での供給懸念や金(ゴールド)に比べて安いことなど、プラチナ独自の材料も存在します(上昇圧力3)。

 昨年、米国の利上げは「3倍速」と揶揄(やゆ)されたほど、急激でした。しかし今は、利上げの可能性は残っているものの、昨年よりもだいぶ温度感は低下しています。コモディティ(国際商品)価格の短期的な急騰が落ち着いたためです。このため今後、利上げの温度感低下が今よりも鮮明になる可能性があります。

 この点は、短期視点のプラチナ価格の上昇要因になり得ます。(長期視点ではコモディティ価格がまだまだ高い点に留意が必要)