株価が動く理由は「ファンダメンタル」「業績」だと思っていませんか?

 突然ですが、株価はどのような理由で動くと思いますか? 「業績が伸びているから上昇する」「業績が悪化したから下落する」「株価が割安だから上昇する」…。

 これらは正解のように思えて正解ではありません。株価が動く理由は「需給」だからです。

 業績が伸びてるから株価が上昇するのではなく、業績が伸びているので「これからもっと上昇するはず!」と多くの投資家がその株を買う結果、株価が上昇するのです。

 逆もしかりで、業績が落ち込んだ銘柄は、それにより「株価がさらに下がるはずだ」と多くの投資家が考えて持ち株を売ることによって株価が下落するのです。

 ですから、企業のファンダメンタルや業績は、株価を動かす間接的な要因ではありますが、直接的な要因は需給です。

 例えば、2008年に起きたリーマン・ショックや2020年3月からのコロナ・ショックによる急落局面では、業績が絶好調の銘柄であろうが一緒くたに売られ、株価が大きく下がりました。これはまさに売りの需要が一時的に大きく膨らんだことが理由であり、業績が理由ではなかったのです。

ネット証券の台頭で信用取引をする個人投資家が増えた

 そして、需給のバランスを大きく左右する要因の一つが「信用取引」です。信用取引は、簡単に言えば証券会社から借金をして、最大約3倍のレバレッジをかけて株取引ができる仕組みです。

 投資資金に限りのある個人投資家が大きな利益を狙うときに活用したり、短期売買・デイトレードをしている個人投資家が短期間の回転売買を行うために使ったりすることが多いです。

 また、空売り(先に株を売り、その後株価が下がったら買い戻すことで差益を得ること)も信用取引口座でないと行うことができません。

 筆者が株式投資を始めたときは、対面型の証券会社はかなり資金が大きくないと信用取引口座を開設してくれませんでしたが、今やネット証券全盛の時代、信用口座開設基準もかなり緩和されていて、個人投資家の取引に占める信用取引割合はかなり大きくなっています。

まずは信用買い残・売り残に注目

 信用取引が株価に与える影響として特に大きいものを二つご紹介します。一つ目は信用買い残・売り残です。

 信用買い残は、信用取引で買い建てを行ったものの、まだ売り決済が終わっていない株数のことです。

 また、信用売り残は、信用取引で売り建て(空売り)を行ったものの、まだ買い決済が終わっていない株数のことです。

 信用取引は原則6カ月以内に決済をしないといけないので、信用買い残として残っている株数は、今後6カ月以内に決済により売りの需要が発生する数量と想定できます。

 また、信用売り残として残っている株数は、6カ月以内に決済により買いの需要が発生する数量です。

 そのため、信用買い残が高水準に積みあがっている銘柄は、将来株価が上昇しにくく、信用売り残が高水準に積みあがっている銘柄は、将来株価が上昇しやすくなるのです。

 時々、業績がイマイチなのになぜか株価は強い、という銘柄に出くわしますが、そうした銘柄は信用売り残が高水準になっていることがかなり多いです。

増担保規制と関連する開示情報にも注意

 二つ目は増担保規制(ましたんぽきせい)です。株価は時に上にも下にも行き過ぎることがあるというのは、株式投資をある程度されている方であれば実感することだと思いますが、ここに信用取引が深く絡んでいることが多いです。

 例えば特定の銘柄の株価が短期間に急騰しているようなときは、得てして信用買いが活発に行われ、それが株価上昇の原動力になっています。

 ただ、証券取引所としては、株価が乱高下して過度に投機的な値動きになることは避けたいため、株価が健全に推移することを目指し、信用取引に対して規制を行うことがあります。

 その代表的なものが増担保規制です。簡単に言えば、過度に信用取引が用いられている銘柄につき、信用取引を行うために必要な担保の額を増やし、信用取引をしにくくします。これにより、信用取引主体による株価の過熱および過度な乱高下を抑制することにつながります。

 信用買い残・売り残や増担保規制についての詳しい内容や、銘柄選び・売り時買い時の選定に際し、どのような点に注意すべきかについて、次回以降のコラムにてご説明したいと思います。

 まず今回は、株価が大きく動く要因は決してファンダメンタルや業績だけではないという点、信用取引が大きな影響を及ぼしている点を覚えておいてください。

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