先週の日経平均は、2万8,564円で終了

 先週末4月21日(金)の日経平均株価は、2万8,564円で取引を終えました。前週末終値(2万8,493円)比では71円高と小幅な上昇にとどまったものの、堅調さを維持した格好です。

図1 日経平均(日足)とMACDの動き (2023年4月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、「2万8,500円の株価水準」と、「3月9日の直近高値」の二つを意識しつつ、比較的狭い範囲内でのもみ合いが週末まで続きました。

 このもみ合いとなった価格帯については、ここ何回かのレポートでも注目していました。

 というのも、3月9日の高値をつけた直後の10日に、欧米金融機関に対する不安をきっかけとして株価が下落し始めた経緯があり、狭いながらもこの範囲を突破できるかどうかは、今後の株価を見据える上で非常に重要になるからです。

 また、週末の4月21日(金)の取引時間中には、9日の戻り高値を更新する場面も見られるなど、先週の値動きによって、欧米の金融不安前の株価をほぼ回復させたことになりますが、その一方で、まだ上抜け突破したとは言いきれない状況です。

 そのため、この価格帯がさらなる上昇への「通過点」なのか、「到達点」なのかどうかが、今後の焦点になります。

 なお、週足チャートで捉えた日経平均は、上向きを強めた13週移動平均線が26週・52週移動平均線を上抜けているほか、株価も2021年9月高値と2022年3月安値の下げ幅を起点としたギャン・アングルの「8×1」ラインを超えてきており、このまま上昇基調が続きそうな印象となっています(下の図2)。

図2 日経平均(週足)の動き (2023年4月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ただし、今週については、積極的な上値追いが難しいかもしれません。

 その理由の一つとして挙げられるのがスケジュール感です。今週の株式市場も、日米で注目企業の決算発表が相次ぎます。

 とりわけ米国では、アルファベットやマイクロソフト、アマゾン、メタ・プラットフォームズといった、いわゆる「GAFAM」銘柄の決算動向が発表され、相場のムードに大きく影響しそうです。

 また、企業決算以外にも、日本銀行の植田和男新総裁体制で迎える初の金融政策決定会合や、米国の1-3月期GDP(国内総生産)をはじめとする経済指標も予定されています。

 本来ならば、国内の大型連休前のタイミングということもあり、手じまいや取引の手控えが想定されるところではありますが、イベントの多さもあって、展開が読みにくく、難易度の高い相場地合いとなりそうです。

 こうした足元の相場の読みにくさは、日経平均(日足)のボリンジャーバンドからも読み取れます。

図3 日経平均(日足)のボリンジャーバンド(2023年4月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 前回のレポートでも説明しましたが、ボリンジャーバンドでは、トレンドが発生した際、バンドの幅が狭いところから株価が動き出しを見せ、バンドの幅が上下に拡大していき、その後、「トレンドが発生している反対側のバンドの向きが変わったところで、いったん株価の動きが止まる」という見方があります。

 まさに先週の日経平均がその状況となっていて、株価のもみ合いが続いています。トレンドが反転して下落していくのか、それともバンドの5本の線が同じ方向を向いて、上昇トレンドが継続する「バンドウォーク」となるのかを見極めていくことになります。

 また、米国株市場の状況も不透明感が強まりつつあります。今週は大手IT企業など、注目の決算が相次ぐことは先ほども述べた通りですが、むしろ注視したいのは、中小銀行を中心に、金融機関の決算が、今週にピークを迎えるという点です。今週は200銘柄を超える金融機関の決算発表が予定されています。

 米国の金融機関の決算については、先行して発表された大手金融機関の決算が好感されて、米国株市場を支えましたが、大手金融機関の決算が好調だったのは、先日の金融不安をきっかけに、中小金融機関から流出した預金が大手に流入したことも影響しています。

 今週からは預金が流出した側の金融機関の決算が増えるため、その業績や見通しの動向によっては市場のムードが悪化する可能性もあります。

米3社の決算発表と市場影響を読む

 なお、先週はザイオンズ・バンコープ(ZION)、キーコープ(KEY)、コメリカ(CMA)といった金融機関が決算を発表し、預金の減少が嫌気されて、株式市場ではそれぞれ下落で反応しました。

図4 米ザイオンズ・バンコープ(日足)の動き (2023年4月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

図5 米キーコープ(日足)の動き (2023年4月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

図6 米コメリカ(日足)の動き (2023年4月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 図4から図6を見ても分かる通り、3銘柄とも3月の金融不安時に株価が急落、その後はやや株価水準を戻したところで1カ月ほど横ばいが続く、といった具合に、非常に似た値動きとなっています。

 また、現時点の株価は決算を受けて下落したものの、再び3月の急落時の安値に向かうような動きにはなっておらず、相場自体はまだ崩れていません。

 とはいえ、今後もさえない金融機関の決算が積み重なることで相場全体のムードが重たくなり、下値を探ることも想定されるため、注意が必要です。

 さらに、米国の金融機関をめぐる不安については、足元の株式市場が想定している以上に根深いものがあるかもしれません。

 最近では、商業用不動産融資やそれを元にした商業不動産担保証券(CMBS)が次の金融危機の火種になるのでは、という見方が報道などを通じて散見されるようになりました。

 前回のレポートでも、現在の米国の商業用不動産の融資残高が4兆4,000億ドルあり、そのうちの約3割の残高が2023年と2024年に償還を迎えるスケジュールとなっていることについて触れました。

 確かに、商業用不動産については、オフィスの空室率が改善せず、賃料や物件価格が下落しつつあるなどの症状が目立ち始めています。

 しかし、これらは景気悪化の側面と同時に、コロナ禍を経て、在宅勤務が定着するなどの社会自体の変化の表れという面もあり、金融政策で対処できない可能性があります。

 今後問題が表面化・深刻化した場合には、ショック的な株価急落シナリオもあり得そうなことは意識しておいた方が良いかもしれません。

バフェット追い風が日本株の買い材料

 最後に日本株の買い材料についても考えていきます。

 最近までの日本株は、低PBR(株価純資産倍率)企業の改善期待や、米著名投資家のバフェット氏の発言(「日本株の追加購入を検討」)などを背景に堅調な値動きを見せており、先行きについて強気の見方も増えてきました。

 特に、バフェット氏については、すでに日本の商社株を購入・買い増ししてきたことが知られており、市場でも大きな話題となりました。ただし、意識しておきたいのは、同氏は「長期の視点で、かつ株価が割安のときに株を仕込む」のが基本的な投資スタンスであることです。

 となれば、自らの発言で株価をつり上げるようなことは考えにくく、同氏が日本株を追加購入するのは株価が堅調な今ではなく、軟調に転じたタイミングと思われます。したがって、株価を支える材料ではあっても、上昇を後押しする材料ではないため、上値が限定的になる展開も想定しておく必要がありそうです。

 したがって、足元では堅調な日米株式市場ですが、下値の堅さが必ずしも上値を追う材料でないこと、また、チャートが示している強気についても、 いつそのはしごが外されてもおかしくはない状況であることを認識することが大切かもしれません。