「銀行の不安連鎖」は「出し渋り」が一因

 なぜ、「銀行の不安連鎖」が起きているのでしょうか。さまざまな理由が報じられていますが、広範囲の関連事項をまとめると、ウクライナ危機下の非西側(≒非民主的国家)が行っている、「二つの出し渋り」が一因であると考えられます。

 つまり、「銀行の不安連鎖」は、ウクライナ危機とつながっている可能性があるのです。以下は、そのイメージ図です。「二つの出し渋り」とは、「資金の出し渋り」と「モノの出し渋り」です。ロシアなどの非西側は、ウクライナ危機を続けることで「二つの出し渋り」を行う口実を得て、それらにより西側にダメージを与えていると、考えられます。

図:非西側による「二つの出し渋り」と西側の銀行の不安連鎖(筆者イメージ)

出所:筆者作成

  西側の常識では、ロシア制裁を科されれば音(ね)を上げて降参するはずですが、上図で示したように、ロシアをはじめとした非西側は「二つの出し渋り」をすることで西側にダメージを与え、メリットを享受していると考えられます。そのメリットが制裁によるデメリットを上回るのであれば、「危機を継続する」という判断は、ある意味自然かもしれません。

「資金の出し渋り」については、「否定できない」という範囲ですが、留意が必要だと考えています。ルール上の制約があるとはいえ、クレディ・スイスへの追加の出資を行わないとし、同社の株価暴落の直接的なきっかけをつくったのは、足元、ロシアやイランと急速に距離を縮めつつある「サウジアラビア」の銀行でした。

 また、FTX(かつての暗号資産大手。2022年11月に破綻)が破綻する前に一時、買収検討していると報じられたものの「出資をしなかった」、暗号資産の交換業者「バイナンス」の創始者・現CEOが西側と一線を画す、ロシアと結びつきを持つ国の出身(同社のウェブサイトより)であることも「出し渋り」を想起させます。

(結果として、バイナンスが買収しなかったことが一因となり、FTXが破綻し、その余波で暗号資産業界と関わりが深かった「米シルバーゲート」「米シグネチャー・バンク」が破綻した)

「モノの出し渋り」においては、ロシアがエネルギーや穀物を「出さない」姿勢を鮮明にしている中、さまざまなコモディティ(国際商品)価格が、2020年に比べて数倍高い水準にあります。このことは西側に「高インフレ」をもたらしています。

「二つの出し渋り」は、「銀行の不安連鎖」「高インフレ」のきっかけとなり、西側諸国のイノベーションを阻害し、競争力を低下させています。